「中国経済は今年に入って、悪化の一途をたどっています」とエコノミストで丸三証券の安達誠司・経済調査部長は言う。

 中国の5月の貿易総額は前年同月から9.3%減り、3カ月連続前年割れとリーマンショック以来の事態となった。また、6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.4%の上昇と、通年平均目標の3.0%を大きく下回っている。

 それにもかかわらず、昨年末から今年6月中旬までで上海株式市場の株価は6割近くも上昇した。株価が企業収益などを反映せず、実体経済からかけ離れた高値に膨らんだのは、政府による金融緩和を背景に、余ったマネーが株式市場に流れ込んだためだ。

 特に、個人投資家による売買が熱を帯びた。今年1~3月の上海と深圳の両市場での取引は、個人投資家による売買が8割以上を占めたとされる。投機的な売買が活発になり、借金をして株を買う信用取引が拡大した。

 ところが、バブルを警戒した政府が、信用取引への規制強化へ動き、先月半ばに株価は急落した。株価上昇を見込んだ信用取引で損失が拡大するのを懸念した投資家など、期待が外れた市場が一気に売りに動いたためだ。

 すると中国政府は、相次いで景気の下支え策を展開。6月24日に銀行の融資残高に対する規制緩和を決め、27日に中国人民銀行による、昨年11月から4回目となる追加利下げを決めるなどした。

「通常、金融政策はその効果を見極めるため、数カ月程度間をあけて次の手を打ちます。想定以上に経済が悪化しているという政府の焦りが、株価の乱高下を招く過度の金融緩和や株式市場への介入につながったのではないでしょうか」と日本経済研究センターの増島雄樹・主任研究員は指摘する。

 中国の経済成長率は昨年まで7%台を保ってきたが、同センターによると、今年は6.9%と7%を割ると見られている。さらに今後も鈍化はとどまらず、20年には5.2%、25年には4.1%に急速に減速すると予測する。

「習政権は今、規制緩和・市場化改革を進めながら高成長から安定成長への『新常態』を目指しています。ただ、今回の政府介入の動きは構造改革が思ったより遅れる兆しです」と増島主任研究員は懸念を示す。

(本誌・長倉克枝)

週刊朝日 2015年7月24日号より抜粋

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