交流戦は個性光る「パ・リーグ」に軍配が上がった。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、球界全体が「個性」を大切にし始めるのではとこう予想する。
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今年も交流戦はパ・リーグが圧倒した。DeNAが長い連敗のトンネルの中にあり、巨人もソフトバンク、日本ハム、ロッテに1勝8敗。セの上位にいた2チームの調子が底にあったことを割り引いても、交流戦史上でパの最高勝率に終わった。戦力格差の議論が出るのは否定できないよ。
よく「DH制」の有無が議論される。西武の森のように、打撃力が抜きんでている選手は、守備に難があったとしても、DHで起用できるから、打撃特化型の選手も活躍の場がある。投手が打席に立たない分、チームの得点力もあがる。序盤は制約を設けるよりも、2点、3点を大胆に取りに行く野球になる。そして、これだけパワフルな打者が増えれば、投手もそれを抑え込む術を考え抜く。先発投手は代打などの投手交代の影響も受けないから、長いイニングを投げるために何が必要かを身につけやすい。投手と野手が切磋琢磨する中で、パワーと技術が高いレベルで融合していることを感じるよな。
逆にセの野球はどうか。1点が大きく左右する展開が増える。ならば、初回から手堅く走者を送るなど、進塁打も重要になる。いかに1点を取るか、そして1点を守るかの攻防は、パよりも繊細だ。それ自体は否定しないよ。だが、細かな野球を必要とされれば、オールラウンダーが増える。逆に何かに特化した選手は代打なり、代走、守備固めになる。野球の違いは選手のあり方に影響してしまっている気がする。
セの投手は、横浜スタジアムや神宮といった球場では長打を打たれたくないから、かわす投球になる。でも、かわせるのは、しっかりと攻めて押し込んだ結果生まれるものだ。逃げ回ってばかりでは、打者の対応は楽になるよ。初球の入り方もそう。セの打者は初球から強く振らないものだから、手探りの配球もありだ。だが、パの打者は初球から積極的に自分のスイングを繰り出すから、小手先の配球では通用しない。
選手は「いかにスケールを大きくするか」が基本線であって、その先に自らプロで生きぬく術を身につけるものだ。若い選手が目先の結果に走ってはスケール感は出ない。采配を振るう首脳陣も、もっと大きな視点で起用する必要もあろう。フロントはドラフトで「守れない選手は獲得しない」とするなら、選択肢を半分捨てているようなものだ。
今年のタイトル争いは久々に外国人選手ではなく、日本人選手のハイレベルな戦いになっている。その面々を見てほしい。ソフトバンクの柳田、西武の中村、日本ハムの中田。セも独特の打撃フォームからフルスイングするヤクルトの畠山が本塁打と打点の2冠に立っている。全員が自分を出し切っている。両リーグトップの8勝を挙げる日本ハム・大谷は160キロの速球がある。球界全体が「個性」を見直すきっかけとなる年になりそうな気がする。
※週刊朝日 2015年7月3日号
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