そこが今回の安保法制の落とし穴です。これまで日米ガイドラインで自衛隊の活動範囲が「アジア太平洋地域」と限定されていたものが、一気に対象を全世界に広げました。地球の裏側にまで行って「後方支援」をやろうとしています。
「後方支援」とは「兵站」のことで、弾薬や燃料の補給をする活動です。武力行使と不可分です。ですから、敵は継戦能力を殺ぐために必ず攻撃目標にします。後方支援は、現に戦闘が行われている区域から離れている場所で行うと説明していますが、危なくなったら移動するというのは事実上不可能。自衛隊が戦争に巻き込まれ、死傷者が出る可能性があります。
歴代政権の政府見解は、集団的自衛権の行使は現行憲法下では認められないとしていました。それを解釈改憲で強引に解禁して、功名心に酔っているように見える。安倍首相のようにヤジに過剰反応し、議論でヒステリックな対応をする人は、実際に有事が発生したときに的確な判断ができないと思います。首相たるもの、もっと泰然自若としてほしい。
私は現役時代は「タカ派」と呼ばれましたが、日本の自衛隊は「専守防衛に徹すべき」と信じ、防衛政策に取り組んできた。それが今、日本は「積極的平和主義」の美名の下に武力を背景にした外交姿勢に変わろうとしているのです。
当選同期には加藤紘一さんがいます。党内きってのハト派だった加藤さんは今、体調が悪くて発言できない。だから、私が加藤さんに代わって発言しようと思っている。加藤さんの平和を愛する“魂”は、よく理解しているつもりですから。
(本誌・西岡千史、牧野めぐみ、古田真梨子)
※週刊朝日 2015年7月3日号