確かに読み進めていくと、「改憲してもいいじゃん」と憲法改正への抵抗が薄れていく気がする。
憲法学者で慶応大名誉教授の小林節氏(66)は、漫画を一刀両断する。
「改憲のポイントとして環境権、緊急権、自衛権が挙がっていますが、これらは現行の憲法ですでに認められていると考えています。全体を通してモノの見方が一方的です」
特に、今の憲法が個人主義的で「個人の自由が強調されすぎて、家族の絆や地域の連帯が希薄になった」との記述には呆れはてる。
「個人主義を批判し、全体主義を目指しているとしたら恐ろしいこと。自由主義とは本来、個人主義になるもの。家族の絆などは道徳的問題であり、法で強制されるべきものではありません。例えば、全体主義になれば自由に離婚もできなくなり、離婚は憲法違反になることも考えられる」
自民党改憲案には「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」と書かれている。現行憲法にない家族重視の姿勢は、LGBT(性的少数者)など多様な家族像を示しているとは思えず、戦前の家族主義にどうしてもイメージが重なる。
加えて「助け合わなければならない」という強い表現は、「親の介護は家族がするべきものだ」と価値観の押しつけ、社会的な圧力にもなりかねない。
※週刊朝日 2015年5月29日号より抜粋