稽古始めの次の日からは…(イメージ写真)
稽古始めの次の日からは…(イメージ写真)

 ダンディーでカッコよく、大人の色気たっぷりの俳優・西岡德馬さん。作家・林真理子さんとの対談で演劇について熱く語った。

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林:稽古始めのときに、皆さんセリフはどのぐらい入ってるんですか。

西岡:作品によってぜんぜん違いますけど、蜷川幸雄さんが「ハムレット」(03年)をやるときに、「セリフ入れてきてな」って言ったら、藤原竜也は稽古始めの日に80%ぐらい入れてきたかな。そのまま立ち稽古やって、次の日は台本持ってないの。

林:うわっ、大変。

西岡:僕はクローディアスと亡霊と両方やったんで、主役のハムレットと同じぐらいのセリフ量になるの。50歳を過ぎてたし、「蜷川さん、覚えられないから台本持っていい?」って聞いたら「いいよ」と言ってくれたんだけど、竜也が台本離してたから、「このヤロー」と思って、俺も初日から台本離してなんとかやった(笑)。次の日からちょっと早く行って、彩の国さいたま芸術劇場の庭で覚えてたら、蜷川さんが来て、「德馬、何やってるんだ」「セリフ覚えてるんですよ」「おまえでもセリフ覚えたりするのかよ」「いやァ、もう最近はダメだな」「そうか。ま、頑張ってな」みたいな感じで(笑)。俺、昔はセリフ覚えが早くて、人のセリフまで覚えちゃうぐらいだったんですよ。

林:1回読むと覚えちゃったんですか。

西岡:1回じゃ無理だけど、文学座の場合は1週間ぐらい本読みの期間があったんで、そのあいだに覚えちゃった。蜷川さんとつかこうへいで慣らされたというか。つかこうへいの場合は「口立て」じゃない。その場で思いついたセリフを彼がバーッと言うんだけど、こっちは覚えられないからもういっぺん聞くと、ちゃんと同じことを言うからね。あれは天才の一個上をいってた感じがする。

週刊朝日  2015年4月24日号より抜粋