専守防衛が原則の自衛隊が、“我が軍”に近づくために準備されているのが、今国会の最大の焦点である安全保障法制の整備だ。3月20日には自民、公明両党が法案の方向性で合意。その内容は「あらゆる事態に切れ目なく対応」(中谷元・防衛相)するものだという。
具体的には、5分野の安全保障関連法案などの整備を目指し、[1]武力行使に至らない「グレーゾーン事態」への対処[2]他国軍への後方支援[3]人道復興支援や治安維持活動[4]集団的自衛権の行使[5]その他の関連する法律の改正――が対象となる。
では、自衛隊の活動範囲はどう変わるのか。新たに求められる任務をまとめた。
◇新たな安保法制で自衛隊に求められる可能性のある任務
集団的自衛権 →米国など、他国が攻撃されたときに反撃。ペルシャ湾などで機雷を撤去
後方支援 →地理的な制約が撤廃され、他国軍隊への給油や武器・弾薬の輸送も可能に
人道復興支援 →PKO以外の復興支援、治安維持活動に参加。検問や家宅捜索も実施
グレーゾーン事態 →米国以外の国の艦船も防護できるようになる
その他 →武器を使用した邦人救出。領域国の承認が条件
この一つひとつの具体化により、実際の戦闘で一人の死者も出したことのない自衛隊は、過酷な任務を負う。かつて内閣官房副長官補として安全保障を担当した柳澤協二氏は言う。
「法案で可能になる軍事作戦としての機雷除去では、確実に隊員に犠牲者が出ます。機雷を完全に撤去するなら、隊員が海に潜って手作業で処理するケースもある。交戦相手の戦闘機が飛んでくる場所では、そんな作戦は危険すぎてできない。それが政治家の間では公然と議論されている」
公明党は、自民党との協議で「自衛隊員の安全確保」を原則の一つとして求め、文書に盛り込まれた。それもどこまで守られるかは不明だ。柳澤氏は続ける。