今回の改正案は、みなし制度が始まる1カ月前の9月施行が明記されている。ただ、法案の先行きは不透明だ。民主党の厚生労働部門会議座長の山井和則衆院議員は言う。
「みなし制度の対象となる派遣労働者の基準をはっきりさせるため、厚労省の労働政策審議会がガイドラインを作ることになっている。日程としては、施行半年前の4月には内容がまとまっていないといけない。なのに、議論すら始まっていません。法案審議にも影響が出るでしょう」
ガイドラインを議論する労政審は、労働者代表と経営者による使用者代表、中立・公平の立場から参加する公益代表の3者で構成される。山井議員は続ける。
「労政審には、使用者代表が参加しているので、直接雇用を認める訴訟が相次ぐような厳しいガイドラインができるとは考えにくい。一方、企業や派遣会社が有利になる緩いガイドラインができれば『法改正の必要はない』となる。3度目の廃案もありえます」
厚労省が13年3月に発表した調査によると、派遣労働者の60.7%が「正社員として働きたい」と希望している。さらに、派遣会社に無期雇用してほしいという人も19.2%いて、あわせて約8割の人が不安定な有期雇用から脱したいと回答している。
改正案が3度目の廃案になれば、派遣社員でもみなし制度で念願の正社員になれるかもしれない。安倍首相は、法改正で「正社員への道が開かれる」と言うが、その目的を達成するには、法案をこのまま闇に葬ったほうがいいのではないか。
※週刊朝日 2015年4月3日号より抜粋