フロアに広がる東京の街──。この日、恩田陸さんは森ビルを訪れ、最新作『EPITAPH(エピタフ)東京』の執筆中に興味を抱いた巨大ジオラマを初めて目にした。
「すごい。よくここまで作りましたね」(恩田さん)
小説で描いたのは、“東京”という都市そのもの。「EPITAPH」とは「墓碑銘」を意味し、構想の段階からこのタイトルは決まっていた。
「江戸の大火、震災、空襲……、東京にはものすごい数の死者が埋もれている。何度も破壊され、常に破壊の予感があります」
小説の取材を開始した2カ月後、東日本大震災が起きた。結果、当時の記憶が作品にそのまま埋め込まれた。「モザイク的な東京を表現したかった」という言葉どおり、ファンタジーのようにも、ドキュメンタリーのようにも読める。
「更新され続ける刹那的な街だからこそ永遠を感じる。唯一無二の街、私は東京が好きです」
※週刊朝日 2015年3月27日号