Christian Schwindt Quintet/For Friends and Relatives (RCA VICTOR) LSP-10070
Christian Schwindt Quintet/For Friends and Relatives (RCA VICTOR) LSP-10070

Christian Schwindt Quintet/For Friends and Relatives (RCA VICTOR) LSP-10070

 これは探しに探して探しまくった。ある日のとあるレコード屋のWEBサイトの更新の時である。そもそもそのサイトに出品されるレコードはほとんど見かけないような欧州盤だったり「幻」のEPだったり、かといって人気盤の廉価なジャケット違いの海外盤などもあり様々なコレクターに対応している。内容充実というやつです。さらには事前に更新の告知「~時に更新します」というお知らせのメールが来る。

 そんなわけで当該時間には日本中のジャズ・ファンがPCの前でリロードに次ぐリロードをしながら固唾を飲んでいるといっていい。さて更新。その更新には一枚につき1~3曲任意の試聴ファイルがアップされている。しかし後述しますが呑気に試聴している暇はありません。まずはアーティスト表記A to Z(プラスEP)までズルっとジャケットをチェックし、もし旧知の盤でコンディションなどの諸条件が問題なければ即オーダーメールを出し確保/確定を待つという段取りを踏めますが、問題なのは所謂「気になるレコード」です。気になるレコードを試聴し、もし”ピン”とくるようなものであれば当然オーダーに進みますがもうその時点でおそらく在庫切れ、先約ありとなってしまうことが多い。まあ、ざっとですが過去そのサイトで挑んだレコードが30枚くらいだったでしょうか、勝敗は8勝22敗です。DeNAより弱い。でもその試聴を終えて注文メールを送る段階でおそらく5分もかかっていないでしょう。が、全国のディガー達はその5分の刹那、既に次々と勝ちどきを上げているのです。もうこうなると戦いですね(笑)5分ですよ、5分。その5分の間に数万円はする初見のレコード、しかも試聴もそこそこに”えいやっ”と特攻オーダーをしたところで既に買えないという……。

 ディガー恐るべし、といったところで今までで最大の悔いがこのクリスチャン・シュウィンドというフィンランドのドラマーのリーダー作品でした。確か¥80,000だったかな? ジャケットに一目惚れし、さらには試聴一発目でヨッシャー!と拳を握り、返す指先で速攻(運の良いことにトップページから一枚目で引き当てたので試聴時間←といっても20秒程度。を含めてもおそらく2分もかかってなかったと記憶している)オーダーメールを送るも数十秒後に返信されてきたメールには「在庫切れ」と。冷静になって考えてみると¥80,000といえば最前から嫁に求められていた洗濯機や強力な掃除機も買える金額じゃないか。頭に血が上ると見境のない典型なので、そこはそんなことを思い出し一旦落ち着いた。分不相応じゃないかと。

 ……しかし翌日、さらに冷静に試聴(試聴ファイルは残っている。SOLD OUTの文字が眩しい)してみればみるほどどうしても欲しい、いま手元にあるレコードを全て売り払ってでも!と思いだすようになり(←重傷)不可能を承知でそのサイトの運営者氏にウォント希望のメールを出してみた。後から考えるとそれが幸いしたのですが。

 さて、それからどうしたかというとほどなく若者から支持を集めるフィンランドの(ザ・ファイブ・コーナーズ・クインテットなどを擁する)RICKY-TICKというレーベルからフィンランドジャズを編集したコンピレーションがリリースされそこに件のリード曲『Helsinki at Noon』が収録され話題に上がった。そうこうしているうちにいくつかのジャズサイトでもこのアルバムが話題に上ったり、ベテラン欧州ジャズファンの方には「1曲を除いて、あとは見るべきところのないアルバム」などと酷評されたり。いずれにしてもあの試聴ファイルを聴いた時点に比べればそのアルバムの存在はマニアの間で知られるようになり、増々入手へのハードルは確実に積み上がっていったように思う。さらに調べていくうちにアルバムに参加しているタパニ・タミネン(b)が存命していることが分かり、件のレーベルオーナー、アンチ・エリッカネン経由で本人から直接入手という大技を試みるも、タパニ自身も結局持っていなかったという落ちもあり。それならと、アルバムにも参加しているヘッキ・サルマント(p)のコレクターでもあるフィンランドの友人レコードディーラーに泣きつくも「手放したら二度と入手できないから」というまともな理由で一蹴される。勿論e-bayや海外オークションでも毎日探したし、日本のレコード店にはほとんど確認した。ちなみにディスクユニオンでさえ一度も入荷したことがないとのことであった。(←この時点で4年経過)

 と!

 あの時にタッチの差で入手を逃した件のネットレコード屋さんから「入荷しました」との連絡が!!キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

 あの手この手、少しダークな手も使ったけど結果叶わなかったこのレコードが遂に。ついに。このアルバムを購入できたのはもう3年前になります。その当時は「もうレコードを買うのはおしまい。このアルバムと余生を過ごす」というくらいの充実度でしたが、結局未だに毎日のようにレコードを買っているし毎日のようにニューディスカヴァリーの存在を知る。とはいえ、このアルバムを入手できたことで「最重要ウォント」リストは全て埋まったのは間違いなく、ある意味自分のレコード人生のエポックです。