「東京駅にも銀座にも出やすく、旅行へ行くにも遊ぶにも便利。駅前には大きな百貨店が二つもあって買い物が楽しいんです」

 夫は2年後に定年したら故郷の北九州へ戻りたがっている。まだ具体的に話し合っていないが、主婦は自宅を売却し、一人で船橋にとどまるつもりだ。

「老後はお芝居を見たり、友達とおいしいものを食べておしゃべりしたりして過ごしたい。地方なんてまっぴら。夫とは、婚姻関係を解消せずに、それぞれの新たな道を進む『卒婚』になるかもしれません」

 老後を趣味や友達付き合いに費やしたいと考えるのは60代後半からの大きな特徴だ。内閣府の世論調査(14年)によると、60代の「今後の生活の力点を置きたい項目」は、「資産・貯蓄」が約18%にとどまる一方、「食生活」約34%、「自己啓発・能力向上」約25%、「住生活」約22%と、ライフスタイルを重視する傾向が見受けられる。

 RSCの「住み替え、リフォームをする際にどんなことを実現したいか」に関するアンケートでも、60代は「学び」「趣味」「役割」を重視。前出の池本編集長が分析する。

「上の世代は『隠居』を意識したが、今は健康なうちに自らの意思で住み替えやリフォームをし、新たな縁を作る『縁居』を選ぶようになりつつあります」

週刊朝日 2015年2月13日号より抜粋

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