Playing Changes/Blues InsideGeorge Coleman
Playing Changes/Blues Inside
George Coleman
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 マイルス・デイヴィスの名盤『フォア・アンド・モア』(Columbia)にサイドマンとして参加していながら、もっぱら話題となるのはまだ10代で驚異的デビューを果たしたトニー・ウィリアムスで、「そういえば、テナーは誰だっけ」などと、ジョージ・コールマンはまさに日陰の存在だ。

 冷静に聴いてみれば、マイルスと並んで演奏を盛り上げているジョージ・コールマンの力量は疑いもないのだが、いかんせん前後に登場した歴代マイルス・クインテットのテナー奏者がジョン・コルトレーン、ウェイン・ショーターという超大物だったのが不運。加えて彼にはコレといった代表作が見当たらず、それも過小評価に輪をかけている。

 かく言う私自身、70年代末にこのライヴ盤を購入したとき、今更ながら「ジョージ・コールマンって、凄いじゃん」と見直したのだから何をか言わんやだ。ただ、レーベルがヨーロッパ盤でメジャーとは言い難く、当時もあまり話題にはならなかった。

 しかし店でこのアルバムをかけると必ずお客様がジャケットを手にとって眺める、「耳で選ばれる」ジャズ喫茶名盤の筆頭であることは間違いない。

 内容はタイトルどおりロンドンの老舗ライヴ・ハウス『ロニー・スコット』におけるライヴ・レコーディングで、編成はヒルトン・ルイスのピアノに、レイ・ドラモンドのベース、それにビリー・ヒギンスのドラムスのみのシンプルなワンホーン・カルテット。

 とにかく一気に吹きまくるコールマンの迫力、乗り具合が凄まじく、まさに『フォア・アンド・モア』の熱気はコールマンの存在も一役買っていたことを再確認させる大熱演。コレと言って変わった趣向は一切無いが、とにかくジャズはミュージシャンのナマのエネルギー感が伝わってくるのが一番ということを、これほど実感させてくれるアルバムも少ない。

 ライヴらしく、ヒルトン・ルイスの快調なピアノソロはじめ、歯切れの良いビリー・ヒギンスのドラムなどサイドマンの聴かせどころもタップリ用意され、ジャズの熱気に浸るには申し分の無い演奏だ。現在CD化状況がどうなっているのかよく知らないのだが、探してみる価値のあるアルバムであると同時に、ジョージ・コールマン再評価には欠かせない傑作だと思う。

【収録曲一覧】
1. Laura
2. Sierra
3. Moment's Notice

Hilton Ruiz(p) Billy Higgins(ds) Ray Drummond(b)

recorded live at Ronnie Scott's on April 19th & 20th 1979

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