昨年、チッチとサリーでおなじみの、50年以上続いたベストセラー『小さな恋のものがたり』を完結させた、みつはしちかこさん。作家・林真理子さんとの対談で、子どものころの思い出などを明かした。
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林:みつはしさんのお母さまは、みつはしさんが小学校のときに亡くなられたんですね。
みつはし:ええ、3年生のときに。
林:一昨年出された『ひとりぼっちの幸せ』というエッセーを読ませていただいたら、みつはしさんってすごくご苦労されてたんですね。
みつはし:そんなことないですが、小さいときからいじめられてましたね。母がきれいで、妹も美人なので、兄なんかから「おまえはうちの子じゃない」とか「女は美人じゃないといけない」と言われて、いまだにコンプレックスがなくならないんです。
林:こんなこと言うと失礼かもしれませんが、みつはしさんの高校生のころの写真、私の高校時代とすごく似てるような気がして(笑)。
みつはし:そうですか? 私は林さんの『野心のすすめ』の帯の写真、真っすぐ未来を見つめている意志の強い目で、とても素敵だと思いましたよ。
林:ありがとうございます。偶然出てきた写真なんですよ。みつはしさん、大病もなさったんですよね。
みつはし:5年前に夫が喉頭がんで倒れて亡くなって、その1カ月あとに私が心不全で倒れて心肺停止になっちゃったんです。「あの世を見てきたんじゃない?」ってみんなから言われるんですけど。
林:いまはもうよろしいんですか。
みつはし:後遺症がいろいろ出てきましたね。手が震えたり、足が弱くなったり。
林:いまは一人暮らしでいらっしゃるんですね。お姑さんを看取られて、ご主人も亡くなって、お子さんたち2人も独立されて。
みつはし:そうなんです。前の家はすごい坂道で、心臓も悪いし、マンションなら鍵一つで出られるし、便利ですし。2部屋ぐらいですけどね。
林:うつ病になられたときもあったそうですね。
みつはし:私、躁うつなんですよ。いいときはいいんですけど、悪いときはすごく落ち込んじゃうんです。
林:とてもつらいときに勇気づけられた言葉があるって、エッセーに書かれてましたね。「人生は嵐が通り過ぎるのを待つためにあるのではない。雨の中でダンスを踊れ」って。
みつはし:ハーブ研究家のベニシアさんの言葉なんです。
林:つらいときはおとなしくして、嵐が過ぎるのを待とうと考えがちですけど、いい言葉ですよね。これはみつはしさんのモットーだと思ってよろしいですか。
みつはし:そうですね。私はどっちかっていうと、けなされてだめなときのほうがファイトがわきますね。
林:でも、チッチとサリーは読者の方からけなされたことなんてないでしょう?
みつはし:それはあんまりなかったですね。
林:ほんとに幸せな作家人生ですね。
※週刊朝日 2015年1月23日号より抜粋