Every Night's a Saturday Night: The Rock 'n' Roll Life of Legendary Sax Man Bobby Keys Bobby Keys、 Bill Ditenhafer 
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Every Night's a Saturday Night: The Rock 'n' Roll Life of Legendary Sax Man Bobby Keys Bobby Keys、 Bill Ditenhafer
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■ロックンロールを生きるサックス奏者ボビー・キーズ

 テキサス州ラボックの南東約15マイルに位置するスレイトンで生まれたボビー・キーズは、「ロックンロールの伝説」を地で行くような人生を歩んできた。
 キーズは10代の前半に、バディ・ホリーと出会い、アマチュア時代のホリーのバンド(クリケッツ結成以前)のリハーサルに要領よくもぐり込む。彼はその後、スクール・バンドで唯一空席になっていたサキソフォンを学びはじめる。そして10代の後半からツアー活動を開始する。未成年の彼の後見人になったのは、クリケッツのドラマー、J.I.アリスンだった。
 キーズはロックンロールの創成期に、ボビー・ヴィーをはじめとするヒット・メイカーともにツアーを行ない、ディック・クラークが司会を務める「キャラヴァン・オブ・スターズ・ツアー」にも出演、セッションマンとしてのキャリアを積んだ。
 彼は、実力派のサックス奏者に数えられ、長年にわたり、ジョー・コッカー(マッド・ドッグス&イングリッシュメン)、ジョージ・ハリスン、ジョン・レノンをはじめとするさまざまなアーティストと、ツアーやレコーディングで共演を重ねてきた。1970年には、ローリング・ストーンズからバック・バンドへの参加を請われ、以来、ストーンズの伴奏を務めている。
 本書『エヴリィ・ナイツ・ア・サタデイ・ナイト』は、ボビー・キーズが、彼ならではの独特の表現で、破天荒なロックンロール人生における数々のエピソードを語る。
 キース・リチャーズが直筆の序文を寄せるこの回想録は、ジョー・コッカー、ジム・ケルトナーといった名高い友人や、ツアーをともにしたミュージシャンの貴重な証言をまじえて、キーズが生来の才能と並外れた個性によって、たんなるサイドメンからロックのアイコンへと進化する経緯を明らかにし、同時に、ロックンロール自体が成熟する過程をユニークに描く。

■第1章より抜粋

 俺は10歳だった。1954年のある日(土曜日だったと思う)、スレイトンの祖父の家でベッドに寝そべっていた。
 その時突然、あの音楽が聞こえてきた。あの種の音楽はもちろん、それまでにもラジオで聞いていた。だがそれは、ラジオのサウンドじゃなかった。なんとまあ、家の外から聞こえてきたんだ!
 だから、飛び起きて、外に出た。すると、そこに彼がいた。バディ・ホリーが。
 バディと彼の仲間は、綿を運ぶトレーラーの荷台で演奏していた。荷台の囲いを取り外した平らな車体を、ステージ代わりにしていた。彼は、ガソリン・スタンドの盛大な開店祝いに呼ばれて、演奏していたんだ。祖父の家から半ブロックのガソリン・スタンドで、目と鼻の先だった。
 俺はもちろん、バディ・ホリーがどこの誰だか知らなかった。ただ、そのサウンドに引き込まれた。エレクトリック・ギターの生演奏を聴くのは、それが初めてだった。
 ベース奏者のことは、よく覚えている。クリケッツが結成される前だから、ドン・ゲスだったと思う。彼は、いろんな色の弦を張ったスタンドアップ・ベースを使っていた。それに、ベースを叩きまくるから、指にバンドエイドを巻いていた。
 まったく何もかもが.....なんというか、まるで大きな山が、身体の上に崩れ落ちてきて、飲み込まれたような感じだった。俺は即座に、この音楽に関わりたいと思った。ものすごいパワーがあった。パワーそのものだった。
 そのとき、閃いたんだ。
 「おいおい、彼らはまさにここで、スレイトンでやっているぞ。だったら、俺も仲間に入れてもらえるにちがいない!」
 その瞬間に、導火線に火がついて燃えはじめた。そしてそれは、いまも燃え続けている。

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