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 名曲「四季の歌」やテレサ・テンの「つぐない」「愛人」など大ヒット曲の作詞で知られる荒木とよひささん。「男船」「浮雲ふたり」などのヒットを持つ神野美伽(しんの・みか)さん。今から約30年前、売れっ子作詞家と新人歌手として、年末恒例の歌謡祭で初めて顔を合わせた。結婚式は99年の11月12日。夫には離婚した前妻との間に子どもが2人いて、22歳の年の差もあったが、反対する人はいなかったという。

*  *  *

妻「結婚して、専業主婦になるつもりでした。デビューからずっと育ててくださった事務所の社長にもそう伝えたんです。そしたら、『よかったね』と祝福してくれ、仕事もすでに入っているものを消化するだけにしてくれたんです。『やめるなんて才能がもったいないよ』と言ってもらえるかと思ったんですけど(笑)」

夫「子どもつくろうかって話もしたよね。子どもがいたら、すげえ教育ママになっていたかもしれない(笑)。でも、歌が子どもみたいなものだから、仕事で上り詰めることを選んでほしい、と僕は思っていた」

妻「デビュー当時、インタビューなどでよく聞かれたんです。『歌が好きなの?』『どうして歌っているの?』って。でも、私は何も答えられなかった。なぜ歌っているのかわからなかったから。20代のころは自分の夢や思いと現実とのギャップに苦しむだけで、いつも考えるのは、もっと評価されたい、もっと稼ぎたい、もっと有名になりたいという、言ってみれば他人との比較ばかり。そういう苦しみからも解放されて、本当にうれしかった……」

夫「ところが、寂しくなったんでしょ(笑)」

妻「そうなんです。歌を離れたらものすごく歌いたくなった。やっぱり歌が好きなんだ、ってあらためて思ったんです。で、『申し訳ありませんでした。もう一度歌わせてください』とお願いして。すると今度は一日一日、歌への愛情と自分への追求心みたいなものが強まっていったんです」

――妻は結局、ほとんど仕事を休むこともなく、歌手として再スタートを切った。次第に俳優の仕事など、歌以外の分野にも活躍の場を広げていく。

妻「私は結婚によって、自立したんです。荒木さんと出会って、いろんなことを教わって、生き方と向かうところがはっきりして、結婚と同時に家庭に入るはずが、自立してしまった。いや、仕事するために結婚したんじゃないかな」

夫「今は教えることはないんですよ。なんせよく勉強している。とにかくじっとしていないで、芝居を見たり音楽を聴いたり、海外へ行ったり忙しい。で、ある日、びっくりするんです」

妻「そうね、全部、事後報告だものね」

夫「『今度、海外へ行く予定ですけど』じゃなくて、『何日に行きます』だろう。今年もニューヨークだけで2回は行ったのか?」

妻「いいえ、3回です」

夫「ニューヨークでジャズピアニストの大江千里さんと共演したり、演歌を披露したりしたというんで、びっくりだよ」

妻「事務所から独立するときも、全部終わった後に話して、怒られた」

夫「いや、怒りはしないけど、そういう大切なことは、ふつう最初に相談するだろうって」

(聞き手 由井りょう子)

週刊朝日  2014年12月5日号より抜粋