北朝鮮が核実験の強行を宣言し、緊張が高まっている。日本はすでに射程1300キロの中距離弾道ミサイル「ノドン」の射程内にあり、北朝鮮の核戦力の直接的な脅威下にある。今回の核実験によってもたらされるのは、日本の安全保障に対する重大な脅威だと軍事ジャーナリスト黒井文太郎氏が指摘する。

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 ここで非常に問題なのは、日本には北朝鮮の核ミサイルを完全に防ぐ手立てがないということだ。日本も核武装して抑止力を持つべきだとの意見が出るだろうが、これは現実的にはほとんど意味がない。日本は日米安保条約によって米軍の核の傘に守られており、北朝鮮の核戦力に対しても、現時点ですでに十分な抑止力がある。北朝鮮が日本に核ミサイルを撃ち込むことは自殺行為にほかならない。

 しかし、北朝鮮が怖いのは、戦争そのものではなく、戦争の末期、あるいは内乱などによって金正恩政権が崩壊する瞬間にある。自暴自棄になって捨て身の核攻撃を仕掛けられたら、米軍の核戦力すら抑止力にはならない。しかも、北朝鮮の場合、いずれこうした局面が現実となる可能性が十分にあるのだ。

 ならば、北朝鮮が核ミサイルを発射する前に、その兆候を察知した時点で先制攻撃をかけ、破壊してしまえばいいのではないか、との考えもあるだろう。

 しかし残念ながら、移動式発射装置型ミサイルの場合、極めて短時間で発射されるため、それを発射前に発見して破壊することなど、自衛隊はおろか米軍にも不可能だ。かつて専守防衛の観点から「敵基地攻撃」が合意か否かが国会で論戦になったことがあるが、憲法以前に技術的に無理なのだ。

週刊朝日 2013年2月22日号