文筆家の北原みのり氏は、現政権のいう“輝く女性”を思いながら、先日亡くなった土井たか子さんが第一線で活躍していた時代を思い出したという。
* * *
国会で海江田氏が安倍総理に聞いていた。「輝きたくても輝けない生活に追われ苦しむ女性に、どのような施策を講じるのか」。総理は答える。「近く、全ての女性が輝く政策パッケージを取りまとめて参ります」。
“全ての女性が輝くパッケージ”か……。この国で女として生きてるのが、とっても惨めな気持ちになるのは何故なんでしょう。安倍政権の元で輝きたくないし、というか輝く予感もしない43歳女の秋です。
それにしても、総理の言う「全ての女性が輝く社会」って、どんな社会なのか。いったい、どういう状態を「輝く」と言うのだろう。
最近、「この人、輝いてるな~!」と感じた女性は、テレビで見た89年の土井たか子さんだ。土井さんがお亡くなりになり、繰り返し流された昔の映像で見る土井さんの輝きに、圧倒された。89年のマドンナ旋風、「山が動いた」と断言した時の土井さんの声と肌の艶やかなことといったら!
あの時私は大学生になったばかりだった。私たちの前には土井さんをはじめ、「女の道」を切り拓いて下さった方がたくさん歩いていた。「女性が活躍できる時代になるのだ」と、私はのんびりと構えていたのだ。「これからは、女であることで苦労はしないはず」と私もキラキラしてた。
ああ、なんて私は甘かったんだろう。日本社会を、私は舐めていた。「山が動いた」から四半世紀も経ってるというのに、未だにオッサンどうしで「全ての女性が輝く社会」なんて話が、国会で討論されるような国だ。だいたい、安倍総理の言ってる「輝く女」の中に、土井さんのような「輝き」は入ってるのか? 平和憲法を守り、男女平等を訴え、「男社会」で拳をあげ女に希望を与えてきた土井さんのような輝きを、総理は本当に応援できるのか?
安倍内閣には、フェミニズムを批判し、性教育やジェンダー教育をつぶしてきた閣僚が目立つ。そんな安倍内閣の言う「輝く」は、大人しく、男の隣で文句を言わず、一緒にキラキラとお金を稼ぐ、そんな女性のように思えてならない。おたかさんの強い輝きが、今、あまりにも眩しい。
※週刊朝日 2014年10月17日号