2013年に「あまちゃん」で注目された有村架純。この秋、初めて舞台に挑戦する。白井晃さんが演出する舞台「ジャンヌ・ダルク」。あるとき、白井さんと会うことになり、話をする中で直接「お願いします」と出演のオファーを受けた。一種の面接のようなものだったのかもしれない。

「お稽古に入る前に、白井さんからお手紙をいただいたんです。そこには、『あなたは普段、静かな雰囲気を漂わせているけれど、瞳の奥に意志の強さがある。それが、今回のジャンヌにピッタリだと思いました』というようなことが書かれていて、感激しました。メラメラとわかりやすく闘志を燃やすのではなく、一見静かだけれど強い、私なりのジャンヌを目指したいな、と思って」

 女優になりたくて上京して、丸4年が経った。その間に、普通の生活をしていたらまず体験することのできない、魂が震えるような出来事に、何度か直面した。白井さんからの手紙もそのひとつだった。

「演じているときも、ふと、“あ、これだ!”って、役を掴める瞬間があったりするんです。単なる自己満足かもしれないですけど……。でも、またこの感覚を味わいたいと思う。そういう依存性というか、病み付きになる魔力みたいなものが、お芝居にはあるんだなって。もともと、おとなしく見られがちだし、実際地味だし、物事にも消極的なタイプなんですけど、お芝居に関してだけは、“もっともっと”って貪欲になっている自分がいて、そこは自分でも“本気で演技することが好きなんだ”ってビックリしています(笑)」

 中学3年生のときに「3年B組金八先生」を見て、同世代の子たちが上手に芝居をしていることに興味を持った。自分だったらどういうふうに演じるだろう? 毎回、そんなことをイメージしているうちに、明確に“女優になりたい”という意思が芽生えたという。

「上京する前までは、大した趣味も特技もないし、こだわりもないほうでした。でもまだ短い人生ではありますけど、お芝居をしたことで、生まれて初めて心から“楽しい”と思えるものに出会えた気がするんです。悔しいと思うことも、くじけそうになるくらいプレッシャーを感じることもありますけど、このお仕事を始めて、人間としても確実に、上京する前より強くなってる。“すごいな、鍛えられているな”って思います」

 人前に出る仕事を続けていく上で、克服しなければならないと思っているのが“人見知り”。周りの役者たちが、芝居だけでなく人間的にも魅力的なことに感化され、普段から、自分の欠点の見直しをはかっている。

「一度仲良くなってしまえば、冗談を言ったりできるんですけど、まだ、“初対面の人にそっけないところがあるから気をつけて”と注意されたりもします。だから頑張って、人としても役者としても余裕があって、信頼される人になりたいです」

週刊朝日  2014年10月3日号