『週刊朝日』の長友佐波子編集長が企業で輝く女性役員にインタビューする「フロントランナー女子会」。今回は外資系製薬会社・アストラゼネカの野上麻理執行役員です。プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパンを経て、2年前に同社に入社し、今年から現職に就いています。
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長友:前職で学んだという、管理職のおもしろさってどういうところですか?
野上:自分一人でやるより大きなビジネスができるというおもしろさですよね。今、うちの会社の後輩を見ていても思いますけども、優秀な人間が陥りやすいのは、自分が優秀だと思っているので、とにかく人に仕事を任せられないってこと。あるいは、自分より部下のほうが専門知識がある場合、自分の存在価値を出そうと、部下と競争しちゃったり。
長友:あ~、わかります。
野上:私も一時期ドツボにはまりまして。当時は独身で会社の近所に住んでいたんですが、家には寝に帰るだけ。あとは全部が仕事みたいな状態でした。
長友:ひとごととは思えない話ですけど(笑)、どうやって変わったんですか?
野上:私から見たら世界一賢いと思うような上司がいたんですが、彼女は人間関係も円滑で、部下に仕事を任せるのがうまかった。コツを聞いたら「みんな、すごい賢いから」とおっしゃったんです。それを聞いて自分がいかにおごっていたか痛感して。それからは腹を決めて部下に任せるようにしたら、自分が想像する以上の結果が返ってくることも増えて、私一人が長時間働いても意味がないことが身に染みてわかったんですね。これは肝に銘じていて、当時の私があったから、今の私がある感じです。
長友:でも部下から報告を待たなきゃいけないときは? あるいは、任せてもうまくいかない場合は?
野上:もう、待たない。社長にはたまに嫌がられますけど、会議中でも「あ、時間」と言って帰ります。それと信頼できる相手であるか、何を任せるかはキッチリ見極めなくちゃいけませんが、「任せる」と決めたら人を育てることを喜びにすることですね。自分の子供だって言うことを聞かないのに、部下は一生懸命、期待に応えようと頑張ってくれる。その姿を見ると苦痛じゃなくなりますよ。