蟹江敬三さん(俳優)。かにえ・けいぞう 2014年3月30日死去。享年69 (c)朝日新聞社 @@写禁
蟹江敬三さん(俳優)。かにえ・けいぞう 2014年3月30日死去。享年69 (c)朝日新聞社 @@写禁

 今年もこれまでに、各界で活躍された多くの方が亡くなった。告別式やお別れの会などで、生前に伝えきれなかった故人への思いや別れの言葉が語られた。俳優の渡辺謙さんから蟹江敬三さんへはこんな言葉が……。

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■蟹江敬三さん(俳優)お別れの会で
2014年5月13日
青山葬儀所(東京都港区)
渡辺 謙さん(俳優)

 蟹さん、驚いちゃった。具合悪いなんて何にも聞いてなかったし、「あまちゃん」では気持ち良さそうに、いい加減なじいちゃんやってたし、知らせを聞いたときはしばらく呆然としてました。

 蟹さんとは、僕が病気して戻ってからのほうがご一緒させてもらった時間が長かったです。お互いの近況や家族のことを話すようになりました。(蟹江さんの長男の)一平が青年座へ入るときも、蟹さんけっこう悩んでたよね。僕がからかい半分に「いいんじゃない。親父の背中がステキに見えるなんてなかなかないよ」って軽口をたたいたら、なんだかわけのわからない笑顔で返してきました。「私のせがれがやるかもしれないよ」といったときも、得意の笑顔が返ってきました。

 蟹さん、画面でも現場でも、いつも気になる存在でした。温かく厳しく、本当にかわいがってもらいました。もっと目やにと鼻水とよだれとぐずぐずの蟹さん、見ていたかった。いまでも、あまちゃんのじいちゃんみたいに、「あれはウソだったんだぜ」って、ひょっこり顔を出しそうな気がしてます。顔出して、メークしてる隣でにっこり笑ってよ、待ってるから。

かにえ・けいぞう 2014年3月30日死去。享年69

週刊朝日  2014年8月22日号