ソーシャルメディアの登場により簡単に情報の共有ができるようになった今、ライブドア元社長の堀江貴文氏は紙媒体の弱みをこう指摘する。
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紙の新聞・雑誌がインターネットに比べて劣っている部分はシェアのしにくさである。電子書籍もそうだ。単体のパッケージになっていて、ソーシャルメディアに引用したい場合はかなり扱いづらい。
この記事にしたって雑誌に掲載されている時は事実上、シェアできないのと同じような状態にある。すべてではないが、雑誌からウェブサイトに転載されて初めてシェアできるようになるのだ。
これはテレビ番組なども同じだ。YouTubeなどの動画サイトが直接ソーシャルメディアにシェアされるのに比べ、圧倒的に不利なのである。ソーシャルメディアは拡散しだすと幾何級数的に閲覧数が増えていき、時には世界的な現象となってしまう。ところが、それがテレビや紙メディアには難しい。というか、不可能に近い。
あの新聞のあの記事が面白かった、興味深かったといっても、ある程度引用されないとそれが面白いのかどうかは分からないし、新聞は二度と同じものは発行されない。国立国会図書館で閲覧するくらいしか、あるいはウェブサイトに転載されるしか後で読むことができないのである。
書籍はまだ、話題になったあとでも購入したりダウンロードしたりできるから口コミの効果はあるだろう。雑誌や新聞はそれがないのがつらい。
特に日本の新聞は定期購読宅配モデルに頼っている部分があるのと、部数が落ちてきて広告効果が薄れていることもあり、広告収入も減っている。ますます定期購読の収益が重要になってくるはずなのだが、新規に「新聞を購読しよう」というモチベーションを上げる手段は限られている。
シェアという考え方は、フェイスブックの「いいね!」ボタンなどが流行した、ここ数年のものだ。それまでは一般的に使われているものではなかったが、急速に普及した。何が変わったのかといえば、ウェブ上に無数のバーティカルメディア、つまりある特定の領域にフォーカスしているメディアが現れたということだ。
シェアという概念の登場以前は、そのようなメディアにたどり着く手段は限られていた。例えば、ヤフートピックスのような膨大なアクセスを集めるポータルサイトに取り上げられるしかなかった。それが、ツイッターやフェイスブックで多くのフォロワーを抱える「インフルエンサー」と呼ばれる個人が、記事をシェアするという非常に簡単ですぐに終わる作業によって手軽にアクセスを集めることができるようになった。
大手のサイトに従属しなくても、良い記事、興味深い記事であればインフルエンサーがそれを取り上げて拡散するから、比較的小規模でも採算を取りながら運営することが可能になったのである。
インフルエンサーが記事を選ぶ作業を「キュレーション」という。ネット上にあふれる記事を選ぶことによってユーザは時間をかけずに面白い、興味深い記事にたどり着くことができる。新聞もある意味キュレーションメディアではあるのだが、シェアができない仕組みが決定的な欠点である。
※週刊朝日 2014年8月22日号