安倍晋三首相(59)は、今国会中に憲法解釈を変更し集団的自衛権の行使容認を目指している。アフガニスタンで武装解除を指揮した経験を持つ東京外国語大学教授の伊勢崎賢治さん(56)は解釈改憲すべきではないとこう語る。

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 今までのような個別的自衛権だけで、日本を守っていけるのかどうか––。そういう問題意識はありますが、憲法9条は変えるべきではないと思っています。

 そこで私が提案しているのが、「日本的な集団的自衛」の方法です。勘違いをしないでほしいのですが、政治家たちが目指している武力による軍事力拡大路線とは違います。日本が目指すべきは非武装による集団的自衛という考え方です。

 たとえば、米国の対テロ戦略ではテロが頻発している地域を銃などの武力で屈服させるのではなく、文化の力で憧れを持たせて、和解に持ち込むのが大切と言われてきました。平和外交には武力ではなくインテリジェンスが必要だということです。

 その役割ができる国は世界的に見ても少ない。イギリスやフランスはやりにくい。今まで世界中で戦争をしてきた米国はもっとやりにくい。同じNATO(北大西洋条約機構)の仲間だと、ノルウェーとかも良いイメージがあるかもしれません。もっとも良いイメージで、やりやすいのが日本だと思うんですよね。

 アフガニスタンでの日本の役割というのが良い例でしょう。アフガン戦争では、日本は同盟国の米国に同調しても、武力介入はしませんでした。

 これは憲法9条の存在が大きかったからです。今まで「戦争はしない」と宣言していた日本だからこそ、平和的な好イメージで日本主導の武装解除につながったと言えます。

 要はドラえもんの世界でいうジャイアンみたいに、力で解決するということをやってはいけないんですよ。日本は頭を使って出来杉君になることが大切なんです。

 だからこそ、自衛隊はスペシャリストとして兵力引き離し、停戦監視など紛争に割って入る交渉屋ができたら良いと思いますね。大部隊は必要ありません。戦っている者の本音みたいなものをいかに実現していくかというのが大切。そういう部分を自衛隊が担っていくことを期待します。

 今まで、何度も憲法改正の議論が出ましたが、戦後67年、結局変えることはありませんでした。今回、世界における日本の役割を根本から議論できる機会を安倍さんがつくってくれた。このことを逆に感謝する必要があるかもしれません。

週刊朝日  2014年6月20日号