中学生のころからプロのギタリストとしてキャリアをスタートしたChar(チャー)氏。ギターとの出会いをこう語る。
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俺が最初にギターを持っている人の絵を見たのはエルヴィス・プレスリーかもしれないね。エレキじゃなくて、アコースティック・ギターを持っているのをシングル盤のジャケットで見たんだと思う。5歳年上の兄貴がレコード・プレイヤーを持っていたんだけど、兄貴がどんどん新しいレコードを買ってきて、ヴェンチャーズ、シャドウズ、アストロノーツとか……。それからヴォーカルものも入ってきて、ビートルズとかローリング・ストーンズ、ヤードバーズ。アメリカのバンドではジェファーソン・エアプレイン、ドアーズ……。
その兄貴の影響でギターを弾くようになるんだけど、最初はヴェンチャーズをコピーしていたね。その後、ジェファーソン・エアプレインのヨーマ・コウコネンという変わった名前と、彼のチョーキングに興味を持ったりしたんだけど、ヤードバーズのレコードを聴いて、初めてエリック・クラプトンという名前を知ることになるんだよ。その中の「ゴット・トゥ・ハリー」という曲は、3コードのブルースだったんだけど、三つしかコードがないのに、12小節ずつ展開していて、そこでプレイされているクラプトンのプレイは、即興なのか、何なのかと思ったね。レコードを一生懸命聴いて、単音ずつ耳コピしていくと、これは何か決まりというか、スケールみたいなものがあるんじゃないかと思った。そうしたら、兄貴のバンドのもう一人のギターの荘司君が、ブルーノートとペンタトニックというスケールがあって、その二つを知っていれば、基本的には大丈夫だと言ってくれたんだ。
中2か中3の時にツェッペリンのファースト「レッド・ツェッペリン」(69年)を聴いた時の衝撃は忘れられないね。「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」が流れた時に全くそれまでと違うサウンドだったし、これだけは自分でLPが買いたいと思った。ツェッペリンの何が好きだったかと言えば、ジミー・ペイジのアコギだった。2曲目に「ゴナ・リーヴ・ユー」という曲があって、それがAm、G、Fというコード進行で一歩間違えるとフォークみたいな感じなんだけど、当時、俺は質屋で買ったフォーク・ギターにエレキの弦を張って部屋で練習していたんだよ。フォーク・ソングにはあまり興味はなかったんだけど、弾き語るみたいなものを初めて覚えたのはペイジだった。俺のアコースティック・ギターの礎という部分ではジミー・ペイジからの影響が一番大きいかもしれないね。もちろんエレキでもコピーして、中学の時、小学校の友達とバンドを続けていたんだけど、レッド・ツェッペリンの登場で、俺以外のメンバーが難しくて誰もついていけなくなった。まずヴォーカルがやめちゃったよ(笑)。
いろいろなことを考えると、最も影響を受けているギタリストはペイジ、クラプトン、ベックの3大ギタリストだろうね。自分がパッとギターを持って出てくるフレーズの90%は彼らからのものだと思う。残りの10%に2千人くらいのギタリストがいると思うんだけど(笑)。
その中で、未だに俺に影響を与えているのはジェフ・ベックだろうね。ストラトで表現するというのはジミ・ヘンドリックスが大体のことはやっているけど、それらの精度を上げて、インストゥルメンタル曲で、何度も観たいと思う演奏をやっているのはジェフ・ベックしかいないと思う。
※週刊朝日 2014年5月30 日号より抜粋