同性愛や、心と体の性が違う「性的マイノリティー」。理解が広がってきているとはいえ、いまだに偏見や差別で生きづらさを訴える人は多く、“20人に1人”という当事者のために大学や企業も動き出している。
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性的マイノリティーは「LGBT」と呼ばれる。レズビアンの「L」、ゲイの「G」、バイセクシュアルの「B」、性同一性障害者などのトランスジェンダーを指す「T」の頭文字だ。電通総研の2012年の調査では20~59歳の男女約7万人中5.2%、約20人に1人がLGBTだ。
若者の間では偏見や差別意識は薄れつつある。東大や京大、慶大、早大などにはLGBTサークルがあり、大学が公認する例も少なくない。当事者が隠さず、身近な存在として自然に周りの理解が進む半面、その先に立ちはだかる大きな壁が「就職」だ。
「『彼氏いるの?』『なんで結婚しないの?』といちいち詮索される。それが苦痛でランチや飲み会を避けるようになり、やがて職場での居心地が悪くなる。その繰り返しでした」
そう話すのは5回の転職経験がある村木真紀さん(39)。レズビアンの村木さんは昨年、LGBTに関する調査や企業研修などを手掛けるNPO法人「虹色ダイバーシティ」(大阪)を設立。昨年実施したLGBT約千人対象のアンケートによると、職場で差別的言動があると答えたのは47.7%、うち75%がストレスを感じていた。転職経験者は6割、その半数が3回以上繰り返していた。
「LGBTは性愛の問題ととらえられがちですが、実は仕事を続けたくても続けられない、パートナーの存在を隠して職場や地域での人間関係を築くのが難しいなど、人生そのものに関わるんです」(村木さん)
ここ数年、外資系などの企業もLGBTに対応し始めている。例えば日本IBMは「ダイバーシティ推進」の一環として、LGBTの社員が働きやすい職場の環境づくりを進める。大阪ガスグループもダイバーシティを推進する基本方針の中に「性的指向」「性自認」の文言を明記し、勉強会を開く。
「有能な社員の5%がLGBTの可能性があり、その人が辞めることは企業の大きな損失。人材流出を食い止める策でもあります」(村木さん)
※週刊朝日 2014年5月2日号より抜粋