2008年に他界した俳優・緒形拳の息子で、同じく俳優として活躍中の緒形直人さん。作家・林真理子さんとの対談で、生前の父とのやりとりを語った。
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林:お父さまは、お孫さんのことを聞かれるのがいやだったんですか。ワイドショーを見ていたら、司会の人がお芝居のことを聞くフリして「お孫さんお誕生、おめでとうございます」と言ったら、ちょっといやな顔をされて、「はい、この話はこれでおしまいッ」とおっしゃったのを覚えていますけど。
緒形:そういうところを人前で見せたくない人なので、まあ、いやだったんでしょうね。ただ、6人目の孫が生まれたときに、「俺は7人の孫が理想なんだよ。『七人の孫』ってドラマ、知ってるか?」って言うんです。「誰も知らねえよ。『七人の侍』なら知ってるけど」みたいな話をして(笑)、「とにかく俺は7人の孫が理想なんだから、おまえらがんばれよ」と言いまして……。
林:ごきょうだいは2人?
緒形:3人なんです。2人、2人、3人で、うちがめでたく7人目の孫を父に届けることができました。父はメディアなどに聞かれるのが嫌いなだけで、「なんだ、この可愛がり方は」と思うぐらい孫にはべったりでしたね。ま、家にはほとんど帰ってこない人でしたけど。
林:「七人の孫」って、森繁久彌さん主演のドラマですよ。
緒形:そうなんですか。僕はまったく知らないです。
林:お父さま、念願の7人の孫が持てて、幸せな晩年だったんですね。
緒形:そうですね。幸せな晩年でしたね。
※週刊朝日 2014年3月21日号