今月は東京で都知事選があるが、来月はパリでも市長選が行われる。東京とパリ、その候補者の対照的な様子に、文筆家の北原みのり氏は驚いたという。

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 次の日曜日は東京都知事選。候補者の政策を読んでいて改めて思う。男の人は「世界一」が、大好きね。宇都宮健児氏は「世界一働きやすく、くらしやすい希望のまち東京をつくります」、細川護熙氏は「世界一の省エネルギー都市・東京へ」、舛添要一氏は「東京世界一実行宣言」、田母神俊雄氏は「世界一、安心安全で清潔な美しい都市に」……。

「世界一」を掲げなければ、意気込みが伝わらないと思うのだろうか。だいたい舛添氏の「世界一実行宣言」は心から意味不明。でも言うことが大きければ大きいほど、何か立派に聞こえてしまうから、不思議。

 今年3月、パリでも市長選があるという。候補者の顔ぶれが、あまりにも東京と対照的で驚いた。主要候補者5人全員女性で、しかも30~50代と、若いのだ。中には、サルコジ政権で法相を務めたラシダ・ダティ氏もいる。大臣時代に妊娠し、父親の名を明かさなかった人だ。

 

 安藤美姫さんが「未婚の母」になったくらいでパニックになる日本社会にいる身としては、とてもじゃないけど、同じ地球上で同じ時代に生きている感じがしない。誰が市長になったとしても、パリはきっと「世界一、女が子供を産みやすい街」「世界一、女がセックスしやすい街」なはずだ。いいな、パリ。

 しかも政治家の女性がセクシーで堂々としていることが、羨ましい限り。性的な魅力が女性政治家にとっては、決して有利に働かないのが、日本社会。性を封じ込め、「母」「妻」「娘」の顔で政治をする政治家に見慣れてしまっている者として、ミニスカートをきれいにはく政治家がリーダーシップを取れる世界は、遠く感じられる。パリはきっと「世界一、女が心おきなくエロくいられる街」なはずだ。いいな、パリ。

 今の東京が「世界一、子供を産みにくい街の一つ」であることは確か。良い方向に変わってほしいと願ってはいる。それでも、「世界一」を宣言したがる子供っぽい男の子政治が幅を利かす日本の政治では、大人の女と相性が悪すぎる! どうか、女のエロに優しい社会を! 心から願います。

週刊朝日  2014年2月14日号