シロクマがぎゅっと抱きしめる腕の中には――。

 カナダ・マニトバ州の北部、ハドソン湾に面した人口約1千人の小さな町チャーチル。

 毎年10月下旬、野生のシロクマがこの町にやってくる。この時期は、狩りができなくなる6月からほぼ絶食状態でお腹がペコペコ。ふらり、と現れたのは、犬の放牧場だ。1匹に狙いを定める。

 尻尾を丸め、威嚇する犬をよそ目に近づくシロクマ。このままでは……。

 と思いきやゴロン。なんとじゃれ合い始めた。初めは困惑するような表情を浮かべていた犬も、何もしないことがわかったのか心を許し、次第に遊び始める。

「このシロクマは推定3~4歳。まだ完全な大人になっていない。犬を友達と思って遊んでいるのではないでしょうか」と、シロクマを5年間撮り続ける写真家の丹葉暁弥さんは話す。確かに、笑顔で見つめ合う2頭からは笑い声が聞こえてきそうだ。

週刊朝日 2014年1月17日号