11月に出版した『ゼロ』が話題となっている堀江貴文氏。著書のキャンペーンなどで書店を訪れているうちに、書店の将来性を感じたという。

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 最近、頻繁に新刊『ゼロ』の営業で全国各地の書店さんをまわっている。サイン本を作ったり、講演会・サイン会も行っている。

 店員さんとランチタイムに一緒に食事をすることもあるし、合間にいろいろ情報交換をすることもある。

 そこで気づいたのは書店って古いビジネスモデルで動いているぶん、イノベーションの余地が大きいということだ。

 つまり、取次を通して再販売価格維持制度に基づき、定価で委託販売を行うのが基本となっている。だから一部サイン本などを除いて、在庫リスクはあまりない。それなりの売り上げを維持していれば何とかやっていけるビジネスモデルなのだ。

 とはいえ、最近、中小の書店はその売り上げ自体が激減しているので小売手数料をある一定ライン以上に維持できなくなっている。そもそもそんなビジネスモデルに頼らなくても面白いことはいくらでもできるというのが私の印象だ。

 まずは、なんといってもライブ体験ができるのが書店の一番良い所だ。私も、書店営業をしているのにもかかわらず、たくさんの魅力的な本に出合うことができ、思わず購入することは多々ある。いちはやくデジタル化が進行した音楽業界がライブイベントでマネタイズしているように、文字コンテンツも急速にこれからデジタル化が進行していくわけで、その読者と著者を結ぶ場としての書店には大きなニーズがでてくる。

 トラディショナルな著者講演会・サイン会のようなものからもっと進化させて例えばソーシャルメディアを通じて集まってきた人たちを、併設するカフェでの読書会に招いたり、著者も参加してディスカッションをしたりという具合だ。

 また、これはすでに複数の書店で計画されているようであるが、本を通じた出会いの場の提供というのも考えられる。今でこそ深夜まで営業する書店が増えてきているが、まだまだ少数派にすぎない。夜の営業時間を遊ばせておくのはもったいない。

 そこで深夜はもっとカジュアルに酒類を提供しながら座り読みができるバーなんてのも面白いし、街コン的に男女が集まる会というのもいい。何しろ居酒屋に集まるよりも安心感があるし、共通のテーマで話ができるということでより盛り上がるかもしれない。

 ヴィレッジヴァンガードに代表される、雑貨を取りそろえている書店も面白い。本がラインアップに加わることで文化的な香りがしてくる。TSUTAYAがコラボしている佐賀県の武雄市図書館のようにレンタルスペースと販売スペースが共存している書店ももっと増えてもいい業態だろう。

 確かに昔からTSUTAYAはビデオのレンタルと販売を共存させていたもんなあ……。なんなら古書もアマゾンのように一緒に扱ってしまえばいいと思う。新品も買い取り品も同じスペースで扱うのだ。

 これまで考えられなかったような新しい業態が生まれてくることがイノベーションの萌芽だ。既存のビジネスモデルが限界を迎えてくることで生まれてくるビジネスモデルに期待したい。

週刊朝日 2014年1月3・10日号