本誌は12月13日号で福島県田村市で、民家の庭に“放射能ガラクタ”を除染業者が家主に無断で埋めるというデタラメ除染をスクープした。この事件で、発掘作業は福島県警に引き継がれたのだが、その捜査がどうにもデタラメなのだ。

 福島県警は12月19日、問題の民家の庭の現場を、家主や田村市職員の立ち会いのもとで捜索した。だが、雨が降りしきるなか、少しだけ庭を掘ると、「終わり、終わり」。県警本部の責任者の声が響き、作業は終了した。

「掘らないのですか」と家主が不満そうに言うが、「もう終わり。また連絡する」と一方的に告げ、県警の10人を超す捜査隊は引き揚げてしまった。

 そもそも筆者に寄せられた情報提供によって、不法投棄は発覚した。11月下旬、家主立ち会いのもと、パワーショベルで民家の庭を掘ったところ、布やケーブル、ガラスなど大量のガラクタが見つかったのだ。

 それを受けて県警は、「令状を取って、後はわれわれの手で掘ります」と取材に規制をかけ、捜査の意向を示していた。

 本誌が、大量のガラクタが発見された状況写真を、この「犯行」にかかわった吉田慎三さん(仮名・40代)に見せたところ、「掘り出されたガラクタは埋めた記憶がある」「あと、1メートルほど掘れば、もっとたくさんガラクタが出てきます」との証言を得ていた。

 だが、現場を引き継いだ県警はその後半月以上たっても、掘削作業を進めていない。家主はこう憤る。

「最初は12月16日に掘ることに決まった。だが、準備がさらに必要と、19日に掘ると延期されました。それをまたも反故(ほご)にされた、何のための捜索だったのか」

 家主は県警の捜索に先駆けて、弁護士のアドバイスを受け、自らの手でガラクタや土の放射線量を測定していた。すると、1メートル以上掘った穴に埋められた布から、200cpmを超す値が計測され、木片からは300cpmを超す数値が。自然界では30~50cpm程度なので、埋められたガラクタが放射能汚染されていることは間違いない。

 表面の土を計測すると100cpm前後。つまり、吉田さんが言うように、原発事故後に埋められたことを裏付ける。

 だが、県警はなぜかそれを認めようとしない。19日も、県警と市が測定すると、布や穴の奥の土は150cpmを超す値だったが、「ずっと同じ手袋をして測っているから高くなった」
「穴に水が入り込み高くなっている」と、笑ってしまう主張を展開。新しい金属片が1メートルの深さに埋まっていたのが見つかっても、「埋まっていたかどうかわからない」。

 おまけに高い放射線量が計測された木片を市職員は雨水で洗い流し、「隠蔽」ともいえる暴挙に出た。

 除染作業の主体である市は、家主が埋めたという除染業者の主張に耳を傾け、不法投棄を訴える家主側の主張にはとりあってこなかった。県警も同じ筋書きに沿って動いているかのようにみえる。家主はパワーショベルなどは持っていないし、事故後は市外に避難していたにもかかわらずだ。

「私に押しつけるような県警と田村市は許せない。もう、信用できません」と家主は言い、「今後は法的措置を視野に入れて対応する」と話すのだ。

週刊朝日  2014年1月3・10日号

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