一時、1ドル=151円台に到達するまで円安が進んだが、今度は円高に動いている。このまま円高が進み、物価高の元凶の一つである円安は、解消されるのだろうか。専門家に聞いた。AERA 2023年2月20日号の記事を紹介する。
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インフレは世界的に深刻化している現象だが、エネルギー・資源や原材料の多くを輸入に依存する日本は、円安の進行で二重苦の状態だった。ただでさえ国際的な取引価格(ドル建て)が高騰しているうえ、日本円の価値が低下して円建て換算の価格が割高になってしまうのだ。
国内の物価にも大きな影響を及ぼす為替相場の今後の見通しはどうなのか? マネックス証券チーフ・FXコンサルタントの吉田恒さんは、まず昨春から昨秋にドル高・円安が進んだ背景について説明する。
「歴史的なインフレを受けて世界中の中央銀行は、物価の上昇を鈍らせるために大幅な利上げを進めました。しかし、日本は金融緩和を維持し、日米の金利差が拡大していったのです」
超低金利の円を売り、金利が高くなったドルを買う動きが活発化したわけだ。昨年10月下旬には、1ドル=151円超に達するまで円安がヒートアップ。だが、その直後である昨年11月7日に発売された本誌記事で、吉田さんは「円安のピークアウトは近い」と指摘していた。
実際、為替相場の流れは急激に反転し、今年1月半ばには一時127円台までドル安・円高が進んだ。米国が利上げのペースを鈍化させたのに加えて、昨年末に日本銀行が金融緩和政策の一部を見直し、国内金利が上昇したことが一因と見られる。
これまで金融政策の舵取りを担ってきた日銀の黒田東彦総裁は、今年4月でその任期が満了となる。新総裁の登場に伴い、金融緩和政策がさらに見直される可能性も指摘され始めた。
「金融政策の軌道修正で日本の金利も上昇するなら、年内にも120円台を突破して110円台まで円高が進むとの見方が増えています。しかし、円高の進行は限定的で、むしろ140円程度まで再び円安に戻していく可能性があると考えています」