1993年6月 結婚の儀 (c)朝日新聞社 @@写禁
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 宮内庁御用掛で、昭和天皇皇族方の作歌指南役を務めた歌人の岡野弘彦氏は、雅子さまの歌人としての恵まれた才能についてこう話す。

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 1983年に宮内庁の御用掛になり、93年にご結婚を控えた雅子さまの「お妃教育」の和歌のご相談役を務めました。雅子さまは語学がご堪能ですが、「歌は初めてです」とおっしゃって、語学の講義の時間を和歌に置き換えられたようです。講義は1コマ90分。15分のティータイムを挟んで、1日2コマ。それを何日か受けていただきました。

 まず、日本の和歌のルーツについてお話ししました。「相手の心を感動させることがまず大切で、これが歌の伝統の原点です」とお話しすると、「そうなんですの?」と興味深そうにお聞きになっていました。

 雅子さまは、とても頭が良く、感性の鋭い方です。質問がとても鋭くセンスが良く、作られる歌も初めてとは思えないほどお上手でした。歌人としての素質も十分お持ちだと思います。

 雅子さまのお詠みになった歌で、私がいちばん心に鮮明に残っているのは、最初の歌会始で琵琶湖の情景をお詠みになった一首です。湖面を照らす澄明な月の光を皇太子さまとお二人で眺めておられるお気持ちが、古典的な風格で調べ高く歌われています。大変、感心し、安心しました。

 お妃教育が終了してからも月1回、東宮御所へお伺いして、皇太子さま、雅子さまそれぞれに講義をさせていただいていましたが、お二人の仲睦まじさに、何度も温かい気持ちにさせていただきました。

 新婚当時の雅子さまはきらきらと輝いておられ、東宮御所の玄関先の階段を皇太子さまと手をつないで、弾むような足取りで下りてこられたこともあります。

 私は御用掛を2007年に退きました。

 10月、文化功労者の顕彰を受け、約6年ぶりに皇居で雅子さまにお会いしました。お顔色が非常によく、表情もいきいきとされていて、本当にお元気になられていました。大変、ほっとしました。

 皇太子さまと確かな信頼で結ばれておられる雅子さま。50歳の節目を機に、お二人で新しい歩みを進めていかれるよう、心から願っております。

週刊朝日 2013年12月13日号