〈なぜ私は結婚できないのか〉とか〈どうして、うちの娘は独身なのかしら?〉とか……。堂々巡りする今どきの女心に真正面から向き合う謎の才女が現れ、支持を広げている。「未婚のプロ」を自称する、ジェーン・スーさん、40歳。ラジオパーソナリティー、作詞家、コラムニストなどさまざまな顔を持ち、初めての著書『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)は人気だ。「ハッと気付けば38歳になっているので覚悟すべし」など、彼女の名言は同世代のツボにはまり、ネットで爆発的に広まった。そんな彼女がみる未婚女性の未来とは。
女性の生き方や結婚観には、その時代が映し出される。バブル期は理想の夫の条件として高学歴・高収入・高身長がそろった「3高」が流行し、その直後に、ゴルフ場や新橋の一杯飲み屋など男性の聖域に足を踏み入れる「オヤジギャル」が登場した。2003年には、コラムニストの酒井順子さんの著書『負け犬の遠吠え』の大ヒットにより、30代以上・未婚・子なしの女性を「負け犬」と呼ぶことの是非が問われ、社会現象にまでなった。
では今、「未婚のプロ」から見える時代とは。
「かつて女性にとって『結婚=食いっぱぐれない幸せ』だった。でも、男性並みに働き稼ぐ女性が増え、一方で、終身雇用神話が崩れて男性だって将来の保証はなくなった。結婚さえすれば一生安泰、という幸せの価値観にはもはや現実感がありません。それでも結婚したい女性は結婚する努力をすればいいし、結婚の優先順位が低ければ、独身でやりたいことをやればいい」と、スーさんは言い、さらに続ける。
「誰かの顔色をうかがうことなく、自分の人生を主体的に選択して生きる。それこそが真の幸せにつながると、私は思っています」
最近の女性たちは「男女同権」「自立」という教育を受けて育ってきた。なのに、こと結婚に関しては、昭和を引きずる価値観から逃れられない。そのズレに違和感を抱きつつも、「結婚すべき?」「結婚しなきゃ!」と堂々巡りを繰り返す。だから悩ましい。
スーさんの本を読むと「ったく男ってめんどくさ!」とあきれつつも、彼らの性質を理解せずに不遜な態度やKYな行動を取ってしまう自分に気づき、「あるよね~」と悔しいけれど膝を打つ。笑える“あるあるネタ”の中に、結婚や恋愛に俯瞰して向き合い、自分らしく生きるヒントがちりばめられている。筆者スーさんは今後、どこへ行こうとしているのか。
「結婚しなかったことを泣いてのたうち回り後悔する先輩を、今のところ見たことも聞いたこともない。さみしさが楽しさを凌駕する日まで、『まだまだ行ける』と独身チキンレースを走り続けます(笑)」
※週刊朝日 2013年11月1日号