今年3月に仮釈放され、再びメディアに登場している元ライブドア社長・堀江貴文氏が、以前から交流のあった作家で尼僧の瀬戸内寂聴氏と約3年ぶりの再会を果たした。堀江氏はライブドア事件を振り返った。
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堀江:いまはスマホが普及して、LINEとか他人とつながるためのツールも増えています。だからあまり寂しくないんですよね。昔はそういうツールが少なかったので、家族とか会社の存在が大きかった。いまはネット上にもコミュニティーをつくれますし、精神的な拠り所がいっぱいあります。インターネットが世の中を変えたんです。
瀬戸内:そういうインターネットの世界で名を馳せて、当時はあなたをいじめる人が多かった。それで捕まって牢屋に入れられたけど、やっぱり有罪になるような悪いことをしたの?
堀江:ああいうのって有罪にできちゃうんですよね。
瀬戸内:でも優秀な弁護士はつけたんでしょ。
堀江:それがつけられなかったんですよ。
瀬戸内:え? なぜ?
堀江:いきなり強制捜査に来られて、1週間で逮捕されたんで余裕がなかったんです。テレビ局と喧嘩をしたので、世の中から一気に総攻撃を食らった。その状態で刑事裁判をちゃんとできる優秀な弁護士が誰かとか冷静に選別できなかった。まさか自分がそんな世界に放り込まれるとは思ってなかったですから。
瀬戸内:ひどい状態だったのね。
堀江:今では誰が優秀なのかわかりますけどね。今一番優秀なのは弘中惇一郎先生ですね。郵便不正事件で村木厚子さんの無罪を勝ち取った人です。最近は小沢一郎さんもそうですね。その弘中先生に、最高裁でようやく頼んだんですよ。紹介してくれたのが「ロス疑惑」の三浦和義さんだったんで、なかなか素直に「はい」と言えなくて時間がかかってしまいました。
瀬戸内:今でも自分が不当な扱いを受けたと感じてる?
堀江:もう忘れました。
瀬戸内:忘れられるの!
堀江:はい。もうどうでもいいです。
瀬戸内:私はあなたが悪かったとは思ってないの。世の中がね、あなたの悪口ばかり言ってたでしょ。あのころから味方でしたよ。私なんかじゃ何をするのか予測がつかない天才的なところが好きなの。今流行の「倍返し」ってやればいいじゃない。
堀江:僕自身のことはもう本当にどうでもいいんです。ただ、おかしいことはおかしいと言い続けますよ。捜査機関って維持するためにはやっぱり捜査をしなくちゃいけない。組織を維持するために、昔は犯罪にならなかったことを犯罪にするのはエゴでしかない。
瀬戸内:なんだか怖いわねえ。私は「徳島ラジオ商殺し」の冨士茂子さんの冤罪事件に関わって20年以上も彼女の闘いを応援したので、裁判の怖さといい加減さを知ってます。それに「幸徳秋水事件」も書いたので、牢屋の中のこともよく研究してます。まだ入ったことないけど。
堀江:確かに、いい加減ですね。
瀬戸内:私はもういろんな冤罪を見てきたからわかるの。だから、あなたの件も一種の冤罪なんじゃないかって。何かに嫌われたのね、あなたは。
堀江:フジテレビですよ。
瀬戸内:目障りだったのね。自分たちの予測できない人間が出てきて、どんどんお金を儲けてね。そういうことが起こると凡人は困るのよ。みんな迷惑するの。それでやっつけろってなった。まあ、世の中を変える人は、世の中から嫌われるものよ。あなたは政治にはもう興味ないの?
堀江:ん~微妙ですね。
瀬戸内:政治だけはやめときなさい!
堀江:(笑)
※週刊朝日 2013年10月18日号