寂しくも日々近づいてくるNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の最終回。この半年欠かさず見てきた「あまラー」の一人、裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火氏は名シーンを振り返りながら、こう語る。
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「早あま」「本あま」「夜あま」と1日3回見てます。最初はざっと見て、次に確認。夜はおさらい。
たとえば太巻が7月31日に言った「あの薄汚いシンデレラの娘」は、キョンキョンの初主演連続ドラマ「少女に何が起ったか」で、石立鉄男さんがよく言っていた台詞。その日は、いまは亡き石立さんの誕生日だったとか、弥生さんがコインを獲るポーズをした9月9日は、「マリオブラザーズ」の発売30周年記念だった、とか。
クドカンの作品というと、そんなネタふりがおもしろく、伏線を張って、セリフ数も多くて喜劇が上手なわけだけど、実はいつだって家族の関係を、丁寧に描いてもいる。今回もその期待が裏切られることはなかった。故郷編のラストで春子と夏が和解するところなんて、クドカン「らしい」。
ベストシーンだと思うのは、東京編の第91話。アキが地元に帰り、海女カフェで、アイドルとして出遅れたユイに「東京でみんなが待ってる」と言う。そうするとユイが「冷めたの、完全に。だってダサいじゃん」と返す。アキはすかさず、「やる前からダサいと思ってた。ユイちゃんがアイドルになるって言いだしたときから」と言って、続けるんだ。「ダサいくらいなんだ。我慢しろよ!」。
ここですよ。アイドルをダサいと切り捨てたことなんて、どうでもいい。そうじゃなくて、ドレミファソラシドで始まるテーマ曲に、ヒロインが跳び上がりながら全身で「J」の字をつくるオープニング。第1話の冒頭から有村架純演じる天野春子の聖子ちゃんカット。テロップを入れないと理解不能な方言……。もうどれをとってもダサい、てか、そもそもNHKの朝ドラを視聴することがダサい! 誰もが感じていたそのことを、「肯定」したのがこの回なわけ。俺、何回見返したかなあ。
放送が終わったら、買い込んであった雑誌をやっと読める。対談やインタビューは読んでも、「あまちゃん」の記事は絶対に読まなかったのだ。だってコワいじゃないの、ネタバレが!
※週刊朝日 2013年10月4日号