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日本の頭脳と技術の粋を集めた「知と技術の闘技場」は、最大にして最先端、そしてどこか美しい。日本の底力を秘めた世界屈指の四つの巨大研究所を訪ね歩いた。海上技術安全研究所(東京都三鷹市)、防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センター(兵庫県三木市)、大阪大学レーザーエネルギー学研究センター(大阪府吹田市)、防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター(山形県新庄市)だ。
不思議な魅力を放つ、これら四つの研究施設。実験をするための無機質で巨大な空間がSF映画のように見えたのは、最先端技術を駆使して、未来を切り開くために造られたことと無関係ではない。たとえば、宇宙船の機関部を思わせるレーザー装置「激光XII号」はエネルギー問題を解決する切り札となり得る核融合を目指している。
だが、この装置を支える最先端技術は、すでに中国に流出していた。レーザー装置には、レーザーガラスが欠かせないが、かつて、最高品質のレーザーガラスを世界で唯一造ることができた日本企業の天才的な研究者が、中国の研究所へ渡ってしまったのだ。近い将来、最高品質のレーザーガラスは中国でしか造れなくなるだろう、という。
しかし、意外な業界の発明が窮地を救った。大阪の建材メーカー・神島(こうのしま)化学工業がレーザー装置に使える透明なセラミックを開発したのだ。「激光XII号」のある大阪大学レーザーエネルギー研究センターの畦地(あぜち)宏センター長が説明する。
「レーザーガラスは、2時間冷まさなければ光の照射ができない。ところが、熱伝導率がガラスの数十倍もあって冷めやすい透明セラミックを使えば、核融合に必要な1秒間に10回のレーザー照射が可能になるのです」
世界屈指の巨大研究所は、日本の技術の底力を秘めている。
※週刊朝日 2013年8月30日号
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