安全を軽視し、真実を隠蔽する――。福島第一原発の事故後も変わらない「原子カムラ」の体質は一体、どこからきたのか。17年前に怪死した動燃元幹部が残した内部の“機密文書”から本誌は新たな重要書類をいくつも発掘した。封印された数々の「闇の歴史」を公開する。

 取材班は日本原子力研究開発機構(JAEA)の前身である動燃(動力炉・核燃料開発事業団)の「安全軽視」を示す資料を新たに発見した。1990年10月に作成された〈再処理施設の定期検査等に係る法律相談〉という資料では、茨城・動燃東海事業所にある核燃料再処理施設の安全検査の“すり抜け”を弁護士と謀議した記録が多く残されていた。

 毎年、義務付けられている定期検査について、施設をいくつかに分割して受検させようとしたり、合格証の交付前に施設を稼働させようとしたり……動燃側が弁護士にした質問は、検査の“ごまかし”指南を求めるものばかりだった。

〈再処理施設をいくつかのグループに分割して、それぞれのグループ毎に定期検査の受検申請をして、そのグループ毎に合格証を受けることは可能か〉
〈(答)法律上は不可能〉
〈定期検査合格前に一部の施設についての検査が終了している場合、その施設の定期検査合格証交付までの期間の運転が許容されるか〉
〈(答)合格証が交付されなければ運転はできない〉

 稚拙すぎる問いを弁護士にピシャリと否定された、こんなやり取りもあった。

〈定期検査合格証の交付を受けなければ、利用(運転)はできないのか〉
〈(答)当然無理〉

 業を煮やした動燃は、ついに法律そのものを改正する“強硬策”まで提示した。

〈他の施設に影響しないで運転できる、という前提で法律を改正するとした時の姿は〉 (動燃側)
〈法律の改正は(中略)非常に困難であり、定期検査の分割申請のための改正は極めて難しい〉(弁護士)

 もちろん、この法改正はその後も実現していない。

 2012年11月、JAEAが「もんじゅ」の機器約1万個の点検を怠っていたことが発覚。鈴木篤之理事長が辞任した。「安全軽視」がにじみ出る20年以上前の法律相談は、こうした未来を予言していたかのようだ。

 選挙についても、新たに詳細な資料が発見された。動燃が故・梶山静六氏、額賀福志郎氏など、有力議員の選挙に職員を動員し、業者からも票を集める「組織ぐるみ選挙」を繰り広げていたことはすでに報じた。

 選挙には「票」に加え「カネ」がつきもの。本誌はついに「カネ」につながるブツを発見した。新たに発見された〈東海村議選塚立候補支援カンパ総括(管理職)〉という一覧表には、その証拠が残っていた。

 資料は88年1月に実施された東海村議選時のもので、現職の猫塚豊治村議(当時)への金銭提供を示している。猫塚氏はその後、議長も経験した重鎮。動燃職員でありながら「二足のわらじ」で、長く村議を務めていた。

 資料には、一口千円のカンパの集金状況が、詳細に記録されていた。

〈管理部長A 3000円 総務課長Y 5000円 計算機室長T 3000円 所長T 5000円……〉

 役職名から、資料は茨城・動燃大洗工学センターの管理職を対象にしたものであることがわかる。事業所全体の集金額をまとめた表によれば、79人の管理職中69人がカンパに応じ、計14万2500円が集まった。東海事業所より人数の少ない大洗だけでこの結果である。20年ほど前に東海事業所に勤めていた動燃OBが語る。

「カンパの要請はペーパーで回ってきて、口数や金額を書いて、現金を封筒に入れて渡したはず。無言のプレッシャーがあり、断る選択肢はなかった。封筒がパンパンになるほど集まっていた記憶があります」

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週刊朝日 2013年8月30日号