政治資金規正法違反の罪で強制起訴されていた「国民の生活が第一」の小沢一郎代表の無罪が確定した。ジャーナリストの田原総一朗氏は小沢氏が無罪でも検察の目的はほぼ達成されたと指摘する。
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検察の狙いとは、要するに小沢氏を首相にさせないことだった。
09年8月に行われた総選挙で民主党は政権交代を実現した。当然ながら小沢氏が首相となる、はずだった。
ところが、その直前の09年3月、小沢氏の秘書だった大久保隆規氏が西松建設からの違法献金を政治資金収支報告書に虚偽記載したとして、東京地検特捜部に逮捕された。直後、私は当時やっていた「サンデープロジェクト」(テレビ朝日)という番組に検察OBで弁護士の宗像紀夫、郷原信郎両氏に出演してもらい、事件について専門家の目で分析してもらった。すると両氏とも、「虚偽記載での秘書逮捕は、どう考えても行き過ぎで、これは捜査の入り口だろう。検察は西松建設から小沢氏への収賄罪を狙っているのでは」と推測した。
だが、西松建設がらみでは結局、確たる証拠は出てこなかった。すると検察は、小沢氏の資金管理団体「陸山会」が04年に東京都世田谷区の土地を購入した際、収支報告書に正確に記載しなかったという虚偽記載の容疑で、04年当時、小沢氏の秘書を務めていた石川知裕前衆院議員ら元秘書3人を逮捕した。検察は一度狙いをつけると、恐ろしく執拗(しつよう)なのだ。
検察は結局、小沢氏を起訴することはできなかったが、検察審査会によって小沢氏は強制起訴された。およそ3年8カ月もの間、小沢氏は「政治とカネ」の容疑者であることを強いられ、「汚れた政治家」という烙印を押されてしまった。
かくして、検察の目的は達成された。こんなことが堂々とまかり通っていいのか。
※週刊朝日 2012年12月7日号