工事再開が容認された電源開発の大間原発(青森県)の安全性には「重大な欠陥」があるという。そして、それは国の審査ルールを無視した結果だとする専門家もいる。

 活断層研究の専門家、広島大の中田高名誉教授は2008年6月に開かれた安全委の専門委員会で、大間周辺の海岸線に地震性隆起の形跡がある、と指摘した。だが、すでにその2カ月前に大間原発の建設許可は出ていた。

 電源開発は、中田氏の指摘を受けて現地調査に乗り出し、大間周辺では、波で削られた古い時代の浅瀬が隆起し、現在の海面より上に顔を出す岩棚が階段状に残っていることを認めた。

 だが、電源開発は「岩棚は、縄文時代に海水面が下降してできた。土地の隆起は、『非弾性変形』という現象が起きたためだ」と地震による可能性を否定した。

 火山地帯では地下の岩石の温度が高いために土地が変形しやすい、というのが非弾性変形の考え方だ。保安院も、電源開発の考え方を追認してきた。

 東北地方を中心とする海岸地形と活断層の関係に詳しい千葉大の宮内崇裕教授はこう話す。「縄文時代に海水面が下降したのは大間周辺だけではない。海水面が下降したのが原因というのなら、日本中に同じような地形が同じ高さの場所にできても不思議ではない。これだけでは説明がつかない。別の理由が必要だ」。

 名古屋大学の鈴木康弘教授は、電源開発の見解をこう批判する。「国の審査ルールには、活断層があると断定できなくとも、疑いが残るなら安全性に配慮して活断層を想定すべきとある。グレーはクロ、という意味です。電源開発の見解は活断層の存在を否定しきれていない。審査ルールにも反する」。

週刊朝日 2012年10月12日号

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