鳥取連続不審死事件で、2件の強盗殺人罪と詐欺、窃盗などの罪に問われている元スナック従業員・上田(うえた)美由紀被告(38)。ほぼ同時期に「首都圏連続不審死事件」で木嶋佳苗被告(36)が逮捕されたため、「西の木嶋佳苗」とも呼ばれた上田被告が、コラムニストの北原みのり氏の接見に応じた。

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 美由紀とは、話したいことがいっぱいあった。この町で、あなたはどのように生きてきたのか。誰と親しかったのか。どんな人生を思い描いていたのか。が、実際に美由紀を目の前にすると、私たちの会話はひどくむなしかった。美由紀は、「時期がきたらお話しします。私は、逃げませんから」と、アイドルのように、ゆっくりと言葉をかみしめるように繰り返すだけだった。傍聴席からの視線は「怖いです。はっきり言って」と言い、メディアに対して「面白おかしく書かれても困る」と批判した。肌がきれいですね、と言うと、「そんなこと、ないです」と下を向きながら、でも感じよく笑った。話題を変えたくて「東京に行ったことありますか?」と聞くと、はぁ?という顔で「ないです」と答えた。「ディズニーランドも?」と聞くと、「ないです。生きてくのに精いっぱいだったんです」と丸い背をいっそう丸くした。

 そんな美由紀が一番反応したのは、木嶋佳苗の名前を出した時だった。「木嶋佳苗、知ってます?」

 美由紀が、へ? という顔をしながらも身を乗り出してきた。「知ってます、知ってます」。

 そして、こう言った。「私と木嶋さんと比べないでほしいです。あの人と私は違う人間だし。たとえ別の人でも違う人間なので。あの人がいけないとかじゃなく、差別してほしくない」。

 それは容姿のことを言っているのだろうか? どういう差別? と聞くと、

「木嶋さんには木嶋さんの生き方があったと思うんです。私もです。その人が生きてきたことを、真剣に受け止めてほしい」

 最後に、「また会えると思うので。ありがとうございます」と美由紀は言った。

週刊朝日 2012年11月16日号より抜粋