国や民間企業で、そして福祉や教育の分野で。発達障害の人たちの就労をめぐる制度改革が進んでいる。障害の程度に応じて少しずつ。多様な働き方が自立を促す。

 千葉県佐倉市の社会福祉法人「生活クラブ風の村さくら」で働く石原慎太郎さん(21)。高齢者の入浴介助などに精を出す。料理が得意で、ホットケーキを焼いたり、友人から習った手品を見せたりして高齢者を楽しませることも。

 彼が他の職員と違うのは、発達障害を抱えていること。知的障害の療育手帳も取得しており、同法人は、ハローワークに申請した上で障害者雇用促進法に基づく助成金を受けている。

 障害者就業・生活支援センターの紹介で、「風の村」で働くようになったのは、2011年3月のことだ。

 1カ月間は「実習」という形で施設の清掃などを行った。その後は、一日4時間の雇用契約を結んで働いた。そして、同じ法人が行う介護ヘルパー2級の講座を受けて合格。

 仕事にも慣れ、現在では一日7時間と勤務時間を増やしている。

 いま、「ユニバーサル就労」という考え方が生まれている。

 石原さんのように障害を抱えていたり、ホームレスや引きこもり状態にあったりして働くことが難しいすべての人が、その困難の程度や個性に合わせて働けるよう、支援していこうという考え方だ。

 こうした「ユニバーサル就労」という考え方は、既存の制度では支援が難しいケースに有効だ。例えば、発達障害がありながら療育手帳を持たない人の場合、これまでは就労支援の対象から漏れ、生活が困窮してしまうことがあった。働く機会を希望する人には、新たな道が開かれたと言っていい。このような支援方法は、少しずつ各地で増加傾向にあるという。

AERA 2012年10月1日号