日本の株価を左右する外国人投資家が口をそろえて「安倍晋三首相」を歓迎する。
「何でもいいから日本を変えてほしい。変わるなら、『日本買い』です」(ヘッジファンド幹部)。
株価はかなり上がりそうだ。無条件ではないが、「日経平均株価は来年末に1万4千~1万5千円も」(クレディ・スイス証券の白川浩道・経済調査部長)という声も上がる。
しかし実は、この予測には、前提条件がある。長期的な成長戦略を詳細に描ききること、大規模な歳出削減も同時に実施することなどだ。
歳出削減については、安倍氏の総裁選公約に〈自立を前提とした生活保護制度の見直し〉とあることから、「生活保護を中心に社会保障を削っていくしかないだろう」(証券業界関係者)。
社会保障に手を付けることは、有権者が嫌うところだ。とはいえ、こうした歳出削減に踏み込まず、金融緩和と公共事業だけで進もうとすれば、株価上昇は一時的な「打ち上げ花火」(金融関係者)で終わり、その後は尻すぼみになるという。財政の収支計算で「辻褄が合わなくなる」(前出の白川部長)からだ。赤字に傾くことを意味する。
「公共投資を増加したぶん、ほかの歳出を削らなければ財政再建はできない。そのうえ、公共投資の景気に対する効果は一時的に過ぎない」(アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの寺尾和之取締役)
国の借金が増えると、「国債の格下げリスクに直面します」(専門家)。格下げに比例して国債の信用度は低くなり、価格も下がる(金利が上がる)。
景気が上向かないのに金利だけ高くなれば、借金に苦しむ個人や企業の破綻が増えてもおかしくない。金利に連動して物価も上がる。つまり、「日本経済は『どん底』です」(ある外国人投資家)。
※週刊朝日 2012年10月19日号