ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、満州事変が始まってから81年の記念日(9月18日)に香港にいたという。そのときの様子をこうレポートする。
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当然のことながら現地の新聞は中国各地で起きているデモ一色、朝からホテルの部屋でつけっぱなしにしていたテレビも、ローカル局からCNNまで、デモ隊に襲撃された日系スーパーの映像を繰り返し流していた。
旅の醍醐味は、現地の人との触れあいである。国家間の争いを、個人の諍(いさか)いに直結させるべきではない。とはいえ、日本人だというだけでいきなり殴られたニュースを見ると、「あえて日本人であることを強調する必要もなかろう」と考えるのが我ながら寂しい。
北京政府としても、この事態は想定外だったのではないか。その翌週、反日デモはピタリと止まった。あれほどの暴動が、政府の「撃ちかたやめ」の号令一つで収まることの方がむしろデモ隊よりも不気味だが、それにしても北京政府はなぜ、これほど短時間で矛を収めたのか。
その背景には国際社会の厳しい目があるようだ。
(週刊朝日2012年10月12日号「甘辛ジャーナル」からの抜粋)
※週刊朝日 2012年10月12日号