先月ニューヨークで開かれた国連総会で、日中は尖閣問題について激しい応酬を繰り広げた。それを見た米国は実際この問題についてどう考えているのか? 元CIA東アジア部長のアーサー・ブラウン氏(61)はこう語る。

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 日本政府が尖閣諸島の国有化で支払った「20億5千万円」という金額を、客観的に見てください。例えば、オスプレイ(V-22)1機の価格は6900万ドル(約53億5千万円)。あくまで単純な比較ですが、尖閣諸島はオスプレイ1機の半額以下に過ぎません。

 私が申し上げたいのは、オスプレイの半額にも満たない、人の住んでいない岩のような島を巡り、日中間の武力衝突、ましてや「戦争の可能性」が論じられるなど、あまりに冷静さに欠けているということです。

 ある米国務省の人物が、尖閣諸島が日米安保条約の適用範囲内だと話したと報道されています。一方、パネッタ米国防長官は尖閣問題について「日中両国の話し合いによる平和的な解決を望む」とも語った。しかしこれを真に受けてはいけません。

 そもそも一般の米国人は尖閣諸島を知りません。米政府の優先順位に尖閣は入っていない。なぜなら他に問題が山積みだから。経済、雇用、アフガン戦争、さらにイスラム教徒による反米デモなど、尖閣に目を向ける余裕などないのです。さらに最大の貿易相手国である中国は、米国の苦しい経済を支えている。また中国は米国債の最大保有国ですから、借りているカネで戦うなんてことはできません。

 そういう状況だからこそ、米国は本気で、日中両国に「冷静に話し合いで解決しろ」と諭しているわけです。そうすることが、日中、そして米国の国益にとっても最善の選択なのです。

週刊朝日 2012年10月12日号