■学会はガンプラコンテストである!

 こうした公私混同(?)にすら感じられるマンガやラジオに対する度を超えた愛情と、学者である点はどうつながるのだろう?

「学者って『社会的に認められたオタク』なんですよ。何かを突き詰めるタイプの人たちが、自分の好きなことをやってごはんを食べている。僕らが子どものころ、デパートの屋上なんかでガンプラのコンクールをやっていて、みんな自分が作ったプラモを持ち寄って競っていました。学会もあれと同じです。学者も『俺の論文は最高だ』と思って発表して、お互いに批評しあう。ガンプラコンテストと変わりないですよ」

 では経営学とのつながりは――と思っていると「実は僕が経営学に入った動機は不純なんです」と語る。

 入山は学士と修士は経済学を修め、三菱総研に入社。海外在住に興味があったため、博士号取得を目的に留学すれば実現できると考えた。しかし「自分が本当にやりたいのは経済学か?」とふと疑問がよぎる。経済学では理論を記述するために数学を使う。それがしっくりこなかったことと、自身の数学の能力に限界を感じていたことが原因だ。

 そんな折、たまたま手に取った経営学の学術誌“Strategic Management Journal”(SMJ)では、自分が大好きなデータ分析を駆使した論文ばかり、しかも理論は自然言語(数式ではなく日常的に使う言葉)で記述されており「これだ!」と直感。

「究極を言うと『知識欲を満たしたい』と『咀嚼して伝えたい』が僕のモチベーションなんです。そして興味があることしかやりたくない。だから今研究者としては、たとえばインド企業などのワイロの研究などをしています。データ解析をして、どういう会社がワイロをやる傾向にあるのかといったことを、経営戦略論で世界トップクラスの学術誌に載せたりしている。単純におもしろそうで、自分でも知りたいし、それを噛み砕いて伝えたいからです。ラジオ番組を持つのも、色々な経営者にお会いするのも、基本はみんな同じ動機です」

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「両利き」で探求してきたからこそ