写真表現としてどこまでの合成、加工が「許容」されるのか、という点は常に議論され続けてきた。その基準は各コンテストでも多様であり、作品のテーマや写真家のスタンスによっても、さまざまな意見がある。
【写真】審査員の視点から「合成」を語ったハナブサ・リュウさん
そこで、現在発売中の『アサヒカメラ』3月号では各界で活躍する写真家に写真の合成と加工に関する「哲学」を聞いてみた。今回はコンテスト審査を行う立場から、写真家のハナブサ・リュウさんに話を聞いた。そのインタビューを一部抜粋して掲載する。
* * *
ぼくは20年あまり、今年で68回目を迎えるニッコールフォトコンテストの審査員を務めているんですが、いい機会なので、その話をしたいと思います。
4部門あるコンテストのうち「第1部 モノクローム」と「第2部 カラー」、そして18歳以下を対象にした第4部は合成OKです。大幅な色の変更も認めています。ただし、「画像加工 有り」にチェックを入れて、自己申告しなければならない。
残りの「第3部 ネイチャー」は自然を対象とした部門で、こちらは合成はダメです。画像を切ったり貼ったり、大幅な変更をしてしまったら、自然じゃなくなってしまいますから。
でも「表現上必要とされる画像加工した作品」は認めています。昆虫や植物を撮るときにピント位置を少しずつ移動して撮影した複数枚の画像を合成する「深度合成」や、ホタルや星の光跡を表現する「比較明合成」などです。その場合は、応募票の「画像加工 有」にチェックを入れて、撮影場所や撮影状況を記入してもらいます。
当然のことながら、昔は「画像加工の有無」なんて応募規定にはありませんでした。デジタルの黎明期は合成写真については、わりと無頓着だったんです。
ところが最近は、さまざまな合成ソフトが出てきて、かなり緻密な合成ができるようになって、合成したのか、見分けがつかなくなってきた。そんなわけで、それを明記してもらう必要性が出てきた。
個人的には、合成とか加工についてはまったく興味がない。けれど、それに否定的ではないんですよ。