この女性は「夫を変えるのは無理」と言うが、夫に転職してほしいと思ったことはない。夫はやりがいを感じているし、年収1千万円台後半という、今の時代に得がたい経済的安定がある。夫の経済力のおかげでシッターや家事代行を利用でき、「お金で時間を買え」、働けていることは、自分が一番わかっている。
ソニー勤務の夫を持つ女性(33)も、夫の海外転勤で人生が一変したが、その変化は自分に大きなプラスになった。外資系企業で働いていたときは、終電帰りが当たり前。給与は高かったが、気分転換のエステや外食、週末の旅行など散財しまくりだった。29歳の時、退職して夫の欧州転勤について行った。
「正直、これでゆっくりできるとホッとしました」
好きだった語学の勉強をするため、現地の大学で仏語とオランダ語を学んだ。下水道料金を巡って家裁にオランダ語で交渉できるほどにマスターした。夫の職場は家から自転車で5分ほど。帰宅も早いので、夜は自宅で手料理を楽しみ、一緒にジョギングやヨガもした。
帰国後、彼女はガツガツ働くことは考えていない。週2で通訳の学校に通い、週3でフリーランスの仕事をする予定だ。
「夫の海外転勤で価値観を変える経験ができたことは、私の人生にも大きかったと思います」
※AERA 2012年9月24日号