このようなケースを見ると、チームに合わないと思って退部、退学してそのままフェードアウトしてしまうのではなく、新たな環境を見つけることがいかに大事かということがよく分かるだろう。また大学野球全体の組織として、不幸な選手を出さないためにも転校した際のルールなども見直す必要があるのではないだろうか。

 苦労に耐えながらチームに残り続けることで養われるものもあるかもしれないが、相性というものも確実に存在している。そして大学生であれば、やり直すことができるケースも少なくない。途中で退部、退学したことを負い目に感じるのではなく、自分の力で新たな道を模索して切り拓く選手が一人でも多く出てきてくれることを切に願いたい。(文・西尾典文)

●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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