すでにインターネット上では、女優や人気アイドルの顔をAI技術で生成させた「ディープフェイク」と呼ばれるポルノ動画が問題になっている。前出の福井弁護士は言う。
「現在の法律では、故人の名誉やプライバシーを害さない限り、AIで故人を甦らせること自体は法的に可能に思えます。一方、誰が死者を甦らせる権利があるのか、どういった活動まで許されるのか、社会的な合意はありません。AIには無限の可能性が秘められているからこそ、ルールを議論する必要があります」
20世紀は、映画や写真、音楽などを大量に複製できる技術が発達したことで「著作権」の考え方を変え、法制度化されていった。それが、21世紀は歌声や表情、会話する時のクセといった「人格」や「個性」が大量にコピーできる時代になる。今年の紅白で、AI美空ひばりの新曲を聴いて涙を流すほど感動する人もいるだろう。だが、そこには危険性が潜んでいることも忘れてはならない。(AERA dot.編集部・西岡千史)