■松本人志はわかっていた

 週刊朝日以来のご縁で、今は「松本人志 Creator×Creator」(月刊文藝春秋)の担当をしている。対談連載なのだが、そこにはいつも「後輩を思う松本さん」がいる。

 たとえば笑福亭鶴瓶さんとの対談(19年3月号)では、「人志松本のすべらない話」が話題になった。鶴瓶さんが「あの番組に出たいって、もう何人の若い子が言うてんねんと思うわ」と言い、「あの番組でちゃんとパッケージ作って、若い子が出やすいようにしてな」と続けた時に、松本さんが少し笑った。鶴瓶さんが「あ、今、うれしそうにわろたな。せやろ?」と突っ込むと、松本さんは「うれしいですね、本当に」と素直に認め、直前の「M-1(2018)」に触れて「チームワークみたいなものに感激してしまって。ちょっと恥ずかしかったんですけど」と涙の理由を語った。

 このやりとりを聞きながら思った。松本さんは「お笑い」というものが盛り上がることを、心から願っている。そのためには若い人が活躍しなくてはならず、自分が応援しようと決意している、と。鶴瓶さんがこの後、唐突に「いずれ何か、しない?」と松本さんに聞いたのは、たぶん私が思ったようなことを鶴瓶さんも感じたからだと思っている。

 指揮者の佐渡裕さんとの対談でも、若手芸人の話をした(19年11月号)。佐渡さんが師である小澤征爾とバーンスタインの話をした流れで、松本さんは「M-1」審査員をしている「ジレンマ」について語ったのだ。ある程度、導いてやることはできるが、導けないぐらいのすごいやつが出てくるにはどうしたらいいのか。そういうジレンマだった。

 あれこれ、昨今の松本さんについて書いた。そのような目で松本さんを追いかけてきたファンとして「M-1(2019)」を見た。松本さんが1人、かまいたちに入れたのを見た瞬間に思ったのは、「松本さん、わかって入れたな」だった。

 冒頭に書いたように、ミルクボーイには「新鮮さ」があった。よく練られた漫才を、まだ売れていない芸人が必死にしていた。そこに感動があった。その点かまいたちは、すでにテレビでよく見る顔だ。同じくらい練られた、よくできた漫才だったが、感動部門だけは負けていたと思う。

 松本さんは、そのことがわかっていた。他の審査員がミルクボーイに投じることも、想像できていた。だから、かまいたちに入れた。「7対0」で負けたとなれば、それがかまいたちの記録に残ってしまう。そのことを避けようとした。ミルクボーイのすごさは、「自分抜き」で十分伝わる。そう判断してのこと。結果、6対1でミルクボーイ。

 以上が私の想像した、松本さんの気持ちだ。これで私の考察は終了で、ファン目線ゆえ実に単純なものになっていることをお許しいただきたい。

 12月26日、かまいたちは記者会見で「松本さんの1票で成仏した。M-1に納得したので、来年につながる」と語ったとネットニュースが報じていた。2020年、かまいたちも、ミルクボーイも、もっとおもしろくなって、もっと売れること。それが松本さんの望みだと思う。

[AERA最新号はこちら]