気の合う外人選手は誰かって? プロレスの始めのころは師でもあるドリーやテリー、テッド・デビアスなんかも好きだったけれど、プロレスを辞めた今だから言えるのは、ブルーザー・ブロディやスタン・ハンセンのような癖のある選手が分かりやすくていい。気が荒い外人レスラーは、その鬱憤(うっぷん)を俺の身体にブチまけてくるし。「あのころはバカみたいにやりあったなぁ」って笑えるのは、駆け引きなしの肉弾戦で戦った相手だからこそ芽生える、友情に近い気持ちが互いにあるから。手加減した相手には、そこまでの心根は芽生えないものだよ。新日本なら長州選手だとか、死闘を繰り広げた相手のことは、「今でも元気にやってるかな」って、ふとしたときに気になることもある。余計なお世話だけど、同病相哀れむってやつだ。
特にハンセンは、パンチだったら顎に、エルボーだったら喉にというように、一つ一つの攻撃が的確で、本気度がわかりやすかったからね。美学というか、自意識かな。100%で向かって来る相手を120%で叩きつぶす。周りにも、「俺たちはここまでやった、何か文句があるなら言ってみろ!」って胸を張れた。そうして言葉を超えた確信みたいなものが生まれると、互いを思いやることができるものなんだ。
久しぶりに会えば、「How are you doing?(元気にやってるか?)」ってあいさつから話すけど、そこには「毎日健康で無事に過ごしているのか?」「家族とはうまくやってるのか?」だとか、言外の感情をたくさん込めているつもりだよ。だって、ハンセンとはアメリカ修行時代に、同じアパートにいた仲なんだから。あるとき、「ごちそうするから来いよ」って俺の部屋でカレーを振る舞ったら大層喜んでね。1カ月後に、今度は彼の部屋でランチに誘われたんだけど、出てきたのが湯がいたフランクフルト2本!「パンに挟んで食べろ」って。「お前……渋いな」って、言葉に詰まったのをよく覚えてる(笑)。彼もあちこちけがをして大変だったけど、今は悠々自適に過ごしているしね。いつの日か、ちゃんとごちそうしてもらおう。