「多くのレギュラー番組を抱える松本さんですが、実はどれも視聴率的にはそれなりで、すでに以前のようなヒットメーカーではないんです。松本さんの才能が遺憾なく発揮できるネット配信番組に関しても、思ったほど存在感を示せていません。例えばAmazonプライムの『ドキュメンタル』はシーズン7まで放送したのでまずまずの成功と言えますが、すでに飽きられつつあり、続編の発表はまだ聞こえてきません。また同Amazonプライムで配信された『フリーズ』のほうは、残念ながら大コケと言わざるを得ない結果でした。これまでキー局で新しい挑戦をし続けて、バラエティのセオリーに風穴を開けてきた松本さんですが、最近やっているローカル番組は普通の街ブラロケみたいなものばかりなんですよね」(同)
■才能ある若手が続々と出現
また、テレビ界で新しい世代の台頭が着々と進んでいるのも理由のひとつだ。
「やっぱり最近松本さんのコメント力が落ちてきている感じはします。そもそもダウンタウンで司会進行を務めるのは、基本的には相方の浜田さんのほうですし、合いの手で入れるようなコメントも昔みたいなキレがなくなってきている。『ワイドナショー』でも、世間とずれたコメントをして炎上騒ぎに発展することもあって、制作現場との間で微妙空気が流れているそうです。一方、中堅クラスの芸人たちの間では『いつまで居座るつもりなんだ』という不満が聞かれることもあります、本人もそのあたりは大いに気にしているようです。千鳥のような人気コンビも出てきていますし、霜降り明星を中心とした第7世代が出現して人気を博すなか、もう自分の時代ではないとどこかで思っているのかもしれません」(民放バラエティ製作スタッフ)
TVウォッチャーの中村裕一氏は、そんな松本の心境とこれからについて考察する。
「確かに30年以上、第一線を走り続けて来ましたから、ここらで本腰を入れてリフレッシュしたいということかもしれません。ダウンタウンが東京に進出し活躍することで日本のお笑いを革新し、視聴者はもちろん芸人、製作者など多くの人たちに与えた影響は計りしれない。まさに現代のテレビバラエティーの基礎となる部分を築き上げたことは間違いないでしょう。SNS上ではコメント力の衰えや現場の不満が取りざたされますが、はっきり言って彼の代わりになる存在は見当たらない。あえて言うとしたら、大御所化したことで周りが変に遠慮してしまうことが懸念されますが、それは明石家さんまやビートたけしなど、他の芸人にも言えること。個人的には60代の松本人志がどんな笑いを生み出すのか非常に興味がありますし、それぞれの年代に応じた“笑い”がきっとあるはず。結局どこに行こうとも日本のお笑いの頂点として君臨することは変わらないのではないでしょうか」
“お笑いの天才”もすでに還暦が目の前だ。トップに君臨し続けることは並大抵のことではないのだろう。「自分が一番面白い」ことを宿命づけられており、その重圧は計り知れないものだが、「ナイトスクープ」の初代所長を努めた上岡龍太郎のような美しい“引き際”をみせることはあるのか。(黒崎さとし)